PART 14

 ついに、高校総体で6位に入賞した新体操界注目の美少女、本条麻由香の全裸演技が始まった。それからの90秒間、17歳の瑞々しい全裸を惜しげもなく晒しながら、リングの演技を次々にこなしていった。

 今回のリングのプログラムは、女性らしいしなやかさや優美さをアピールするものとなっており、しなやかな身体を前に折ったり、後ろに反らしたり、身体を反らしながら右脚を宙高く突き上げたり・・・しかしそれを全裸で演じることは、全裸の身体を一つの姿勢に緊縛されることよりも、ある意味で遥かに恥ずかしいことだった。

 麻由香は全ての演技をようやく終えると、崩れ落ちるように座り込んだ。さっき脱いだ服は当然の様に取り払われていて、男子達に周囲を完全に囲まれたままの麻由香は、自力で服を着ることはできない。
「お、お願い、服を返して・・・」
一糸纏わぬ身体を手で隠しながら懇願するしかない麻由香だった。
(お、終わった・・・も、もういやよ、こんなの・・・早く家に帰りたい・・・)

 「あら先輩、駄目ですよお。ちゃんとリプレイで、ミスが無かったか、みんなでしっかり確認しなくちゃ。」
陽菜があっさりと、麻由香の恥辱地獄の続行を宣言した。いつの間にか、麻由香の恥辱ショーの主導権は佐々岡から陽菜に完全に移っていた。

 そして今度は、麻由香の素っ裸での演技の一部始終が大スクリーン上で再生され、その場の皆に鑑賞されてしまった。スローモーションやコマ送りを多用されながら、演技中にはちらりとしか見えていなかった秘裂や尻の穴が映った瞬間で意地悪く映像を止められ、麻由香自身ですらよく見たことの無い部分が、すっかりみんなの脳裏に刻まれてしまった。

 羞恥責めのような時間がようやく終わり、麻由香は田之倉に向かって言った。
「こ、今度こそ、ノーミスで演技した筈よ・・・メモリーカードの記録、消去してもらえるのよね。」
どんなに卑猥で恥ずかしい映像を記録されているかを嫌というほど思い知らされている麻由香は、服よりも先にその記録の消去を願った。あんな映像がもし出回ったら、私、もう外を歩けない・・・で、でも、もう大丈夫、今回の演技なら、陽菜と美加だって文句の付けようがない筈・・・


 しかし、田之倉が口を開くよりも早く、女子の声が響いた。
「あら、随分自信満々見たいだけど、減点だらけじゃないの、今の演技?」

 背後から突然聞こえた声に、麻由香は全身の血が引くのを感じた。
 (・・・い、今の声!? ま、まさか・・・!!)
麻由香が体を隠したまま振り返ると、そこに見た光景に、一瞬、息を呑み込んだ。
「・・・ま、ま、牧原さんっっ! ど、どうしてここにっ!?」
そこには、牧原絵理奈を初めとするN高校新体操部の女子6人が立ち、全裸で横座りになった麻由香を見下ろしていた。(い、いやあっ、どうなっているの!?)

「あら、大丈夫よ、今更隠さなくたって。私達、あなたの今日の『模範演技』、ぜーんぶ、見せてもらってるから。」
必死に全裸の体を隠そうとする麻由香に向けて、絵理奈は冷たい笑みを浮かべながら言った。
「それにしても、あなたにこんな趣味があったなんてね・・・ま、確かに人気取りのために不必要に媚び売ってるのは感じてたけど。」

 「そうそう、何か、演技する時の腰の振り方、嫌らしかったもんねえ。」
「あ、そう言えば、開脚ポーズの時も、不必要に恥ずかしそうな顔しちゃって男達を喜ばせてたわよね、このコ。」
「なーんだ、本当は裸を見て欲しかったんだ。それなら新体操なんてしないで、最初からAVに出て欲しいわね。」
「そうそう、このコのせいでエロオヤジの新体操ファンが増えたのよねえ、ほんと迷惑。」
「お願いだから、『私、高校総体で入賞しました』とかいうAVに出ないでよ・・・あ、今のビデオ売れば、そのものじゃない(笑)」
他の5人がすかさず絵理奈に続き、麻由香の恥辱を煽った。

 「え、そ、そんな・・・ち、違います・・・」
あまりに突然の出来事に混乱した麻由香はそれだけ言うのが精一杯だった。
「とにかく、早く服を返してください、佐々岡さん・・・」

 「おい牧原、何でここで麻由香ちゃんが模範演技してるの分かったの?」
佐々岡は麻由香の言葉を無視して聞いた。
「やっぱり敵情視察か? 二人とも、今度の総体の優勝候補だもんな。」

 「何言ってるのよ、悪いけど、こんな破廉恥なコに負けるつもりなんてないわ。」
絵理奈は憤然として言った。
「だいたいさっきから失敗ばっかりじゃない。何が模範演技よ、笑わせるわ。」

 「まあまあ、去年の総体で3位の絵理奈ちゃんから見ればそうかもしれないけどさ、結構頑張ってたじゃん、麻由香ちゃん。」
佐々岡が言った。
「・・・けど、橘さんもひどいよな?。N高出身のくせに、わざわざ隣のS高のコーチになっちゃうんだもんなあ。そんなに麻由香ちゃんの素質って魅力的なのかなあ?」
佐々岡は明らかに、絵理奈の感情を逆撫でして楽しんでいた。
「そう言えば、マスコミも去年の夏までは絵理奈ちゃんを高校新体操界で一番の美少女って言ってたのに、麻由香ちゃんの総体デビュー以来、すっかり・・・あ、ごめんごめん。」

 「あら、別に言ってもいいわよ、全部事実だから。・・・だけど私は、新体操の実力だけは負けてないつもりよ。」
絵理奈は平然と言ったが、その体が屈辱にわなわなと震えているのが皆に見てとれた。
「・・・あら、練習のお邪魔しちゃったみたいで悪かったわね、麻由香ちゃん。私達も見学していいかしら、あなたの『模範演技』?」

 「え、あ、あの・・・もう、模範演技は、終わったんですけど・・・」
麻由香は相変わらず素っ裸の体を両手で隠しながら言った。
「ほ、本当に、・・・見て、いたんですか?」
藪蛇になるかもと思いつつ、聞かずにいられない麻由香だった。

 「ええ、見たわよ、裸で大股開きするところも、そのリプレイも、あなたの、とっても口に出せないような恥ずかしい挨拶も、全部、ね。」
絵理奈は薄く笑いながら言った。
「だって、私達の体育館のスクリーンに、突然あなたの姿が大映しになって、これから模範演技します、なんて言うんだもの。まさか、こんな『模範演技』とは思わなかったけど(笑)」

 「あ、ごめんごめん、麻由香ちゃん。よく見たら、このモニターの画面、新体操部用の体育館のモニターとシンクロする設定になってた。いやあ、初めてなんだよね、N高のモニター使ったの。」
田之倉が頭を掻きながら言った。
「でも良かったね、見たのがこの六人だけで。・・・下手したら、N高校の全部のディスプレイとシンクロするところだったよ。体育館全部と全教室と職員室で上映されちゃったら、シャレにならなかったね、麻由香ちゃん(笑)」

 「そ、そんな、・・・た、田之倉くんっ!」
信じられないミスを犯しながらへらへらしている田之倉に、麻由香は心底腹が立った。全裸で晒した恥ずかしいポーズの数々を改めて思い出し、麻由香の体は隅々まで朱に染まっていった。ライバルのN高校新体操部、しかも牧原絵理奈にまで見られてしまったなんて・・・
「も、もう!・・・いいから、早くそのビデオ、削除して!」

 「だからあ、それはさっきの演技にミスが無かったら、でしょ?」
そこでまた、絵理奈が口を挟んだ。
「私よりも素質があると橘コーチに認められたんだから、私に見つかるようなミスしちゃダメよね?」
男子達の隠微な期待に満ちた視線を集めながら、絵理奈は続けた。
「・・・例えば、リングを前に転がして、戻ってくるところを掴まえる時の、身体のバランスが少し、崩れていたわよね?」

 「え、そ、そんな・・・絵理奈さん?」
麻由香は絶句した。いつも隣のコートで練習している顔見知りの男の子達に囲まれながら、全裸で演技をさせられたのに、これ以上、私を辱めたいの? それに、絵理奈の言っていることは、重箱の隅を突つくような細かい点ではないか・・・

 しかし、麻由香が絶句している間に、スクリーンには、そのシーンがストップモーションで映し出されていた。乳房と股間の茂みを丸出しにしている全裸の姿をまた大写しにされ、麻由香は内心で羞恥に震えた。

 「あ、ほんとだあ、体の軸が少しずれてるうっ! さっすが、絵理奈さん、するどーい!」
陽菜が大仰に感心した。男子達を振り返り、小さくウインクする。
「どうですか、みなさん、分かります?」

 「ああ、そう言えば、バランス悪いねえ。」
「うん、これじゃあ、減点だろ、普通。」
「もう少し、安定感が無いとねえ。」
「もうちょっとなんだけど、惜しいねえ。」
男子達が本当はよく分からずに同調しているのは明らかだった。とにかく、ミスということにすれば、あの、本条麻由香をもっと辱めることができるのだ・・・憧れの美少女が目の前で一糸纏わぬ姿を晒していては、男子高校生が自制するのは無理だった。

 「どうする、麻由香ちゃん、ミスしたことを素直に認める? それともミスを認めないで、S高校新体操部の3年生、いや部員全員に判定してもらう?」
田之倉が麻由香の露わな肢体を飽きもせずカメラに収めながら言った。
「いやあ、ほんとにきれいな裸だね、麻由香ちゃん! これより恥ずかしいこと、って言ったら・・・やっぱり、あそこをぱっくり開いて、きれいなサーモンピンク、奥の奥まで見せるしかないよね!(笑)」

 「い、いやあっ!」
田之倉の言わんとしたことを悟った麻由香は思わず叫んだ。全裸になるだけでも死ぬほど恥ずかしいのに、この卑劣な男は、こともあろうに、女性の最も大事な部分を開かせ、更にその中を写真とビデオに撮る、と言っているのだ。
「い、いや、そんなの、絶対に、いやあっ!」

 「おいおい、そんな露骨なこと言うなよ。驚いてるだろ、純情な麻由香ちゃんが。」
佐々岡が取りなすように言った。
「だけど、麻由香ちゃんだって、絵理奈ちゃんの指摘を否定できないんだろう?・・・何か適当なところで許してあげようか、絵理奈ちゃん?」

 「うん、まあ、仕方ないわね・・・私達も、麻由香ちゃんのご自慢の体はもう、十分に見せてもらったし。」
絵里奈は嫌味たっぷりの口調で言った。
「それじゃあ、麻由香ちゃんにプレゼント、持ってきたから、これを着て今度の高校総体に出て、3位以内に入ったら、ビデオや写真は消去するってことにしない?」
そう言いながら、絵理奈は手に持った純白のレオタードを麻由香の前に差し出した。

 「・・・え?」
麻由香は訳が分からず絵理奈を見上げた。それは、さっきの佐々岡のいたずらとは違って、きちんとした試合用の本物であることはすぐに分かった。
「あ、あの、これを着て試合に出ればいいんですか?」
突然の羞恥地獄の終了に、麻由香はほっとしながらも、一抹の不安を感じていた。
「で、でも3位以内なんて、そんな・・・それに、それじゃあ、今日は削除しないってことになってしまうんじゃ・・・」

 「ええ、これはね、あなたを認めた橘コーチの現役時代のレオタードよ。橘さんは私がいるN高じゃなくて、あなたのためにS高のコーチになったんだから、これはあなたが持っているべきだと思ってたの。」
絵理奈は少し寂しそうに言った。
「だから、コーチに言って、今度はこのレオタードで試合に出なさい。・・・それに、せっかくこんな大事なものもらうんだから、表彰台くらい上がらないと格好つかないでしょう?」

 「わ、分かりました・・・」
麻由香は胸を隠している右腕を身体から離さずにそのレオタードを受け取った。そんな理由で大先輩の思い出のレオタードをもらって良いか分からなかったが、とにかく今は、早くこの場から逃げ出したかった。
「それでは、このレオタードで今度の総体に出るとお約束しますので・・・」

 「あ、ちょっと待って。」
少しでも早く切り上げようとする麻由香の言葉を遮るように絵理奈が言った。
「大事なものを上げるんだから、ちょっと着て見せてよ。それから、それで演技がちゃんとできるか、もう一回、やって見せてよ、『模範演技』」 


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