PART 33(bbbb)

 脇道に入った柏原のバイクは、信号の無い直線の道を順調に進んでいった。しかし、多くの男女が歩いていて、バイクの後ろに乗っている裸の女性に驚愕している点では同じだった。

 え、嘘ぉ、何、あれ、裸だ、裸っ、すっげえケツの突き出し方!・・・もはやすっかり馴染みの野次を浴びせられながら、梨沙は一つの違和感を感じていた。なんか、聞き覚えのある声が多いような気がする・・・梨沙は薄く目を開け、シールド越しに周囲の様子を窺った。
「・・・え、え、嘘っ・・・あ、あん、あんっ、あぅぅっ・・・」
見覚えのある制服姿の男女、見覚えのある道・・・ここは、K附学園に続く大通りからのアプローチの直線道路だった。

 まさか、柏原くん!・・・学校の中に逃げるつもり!?・・・確かに、アイリスの車は入れないだろうけど、中には部活の生徒達が・・・
「だ、だめっ、柏原くん・・・あ、あぁんっ・・・い、いや、いやあ・・・あひぃぃ・・・」
膣の中で荒れ狂うローターと、バイクの振動に秘肉を責め立てられ、梨沙は悶えながら柏原に訴えた。ただ裸なだけでなく、性的な快感に悶えるこんな姿、学校のみんなにだけは、見られたくない・・・

 しかし、今の柏原にはそんな梨沙のデリケートな心情に気を遣う余裕はなかった。
「ごめん、梨沙ちゃん、他に方法がないんだ。もう少しだけ、我慢して!」
女性とつき合ったことのない柏原にも、梨沙の様子が尋常ではないことは薄々分かっていた。梨沙ちゃん、ひょっとして、感じちゃっているの? どうしてこんなに?

 校門の脇には初老の警備員が一人立っていたが、まっすぐ突っ込んでくるバイクに慌てた。
「おい、何だ、お前ら? ここは学校だぞ!」
そう言って、両手を広げて制止したが、柏原は巧みにバイクを操り、その手の先をすり抜けていった。きゃあ、という梨沙の声が聞こえたが、振り落とさずに走れる自信があった。

 校門を抜けると、そこは広い校庭であり、テニス部と陸上部の数十人の生徒達が部活を行っていた。他にも、体育館で部活をしているバスケ部や卓球部、バレー部の生徒達がランニングしたり、文化部の生徒達、居残っていた生徒達が歩いていた。それは梨沙にとって、いつもの見慣れた光景だった。しかし、今の自分は普段の制服姿ではなく、何も身に着けていない、全裸なのだ・・・

 ブオォンッ、という轟音に、校庭の生徒達は驚愕して入ってくるバイクの方を見た。そして、そのバイクがほとんど減速せずに校庭の真ん中目指して走って来るのを見ると、半分パニック状態になった。
「う、うわ、危ないっ」
「おい、突っ込んでくるぞ!」
「どけどけ、みんな、コートの脇に避難しろ!」
「あれ、後ろに乗ってるの、裸の女じゃねえか?」
「え、一体何なんだよ!」
「すっげぇ、本当に真っ裸だ。ケツ丸出しだぞ!」
驚愕と恐怖、好奇心がないまぜになり、校庭は喧噪に包まれた。

 それは、柏原が一瞬のうちに考えた作戦だった。裸の梨沙にできるだけ視線を集めないためには、バイクに目を向けさせるしかない。そして、一気に校庭を突っ切れば、梨沙の裸に注意が集まる時間は少なくなる。ただし、その先は運任せだった。あとは、うまく保健室にでも行ければ・・・ いつもまじめな優等生の柏原にしては、あまりに大胆な行動だった。

 柏原はそのまま校庭を突っ切り、校舎の正面玄関の前で停止した。ちょうど出てくるところだった女子5人組が、きゃあっと悲鳴をあげて目の前で立ちすくんだ。その声に、校舎の中にいた他の生徒達も駆け出してきた。
 大勢の生徒に囲まれ、ドッドッドッ、と場違いなエンジン音と共に、あ、あんっ、ああっ、という女性の切なそうな声が混じって聞こえていた。

 「ちょっと、何なんですか、あなた達!」
しばらく絶句して見つめていた生徒達のうちの一人の少女が、バイクの上の柏原に声をかけた。
「警察呼びますよ!」

 (・・・紀子ちゃん?)
その気の強そうな声は、2年3組の副クラス委員の山口紀子に違いなかった。梨沙とは生徒会役員の仲間同士でもあった。親しい友達にこんな姿を見られていると思うと、梨沙の身体が改めてかあっと熱くなった。
「・・・あ、あぁ、あぁんっ・・・」
駄目だと思っても、バイクとローターの振動の共鳴は梨沙を許してくれなかった。見ないで、紀子ちゃん、私のこと・・・お願い・・・しかし梨沙は、腰を前後にくねらせなければ、快感を堪えるためことができなくなっていた。違うの、紀子ちゃん、これは違うの、訳があるの・・・紀子が軽蔑した表情を浮かべるのを見てしまい、梨沙は内心で必死に訴えていた。

 「山口さん、俺だよ、俺・・・」
バイクの上の柏原は、首紐を外すと、ヘルメットを持ち上げて顔を見せた。きゃあ、柏原くんっ!?、と驚愕する女子達に、柏原は小さく頷いた。
「ごめん、今、事情を説明している余裕はないんだ。後でちゃんと話すから・・・」

 柏原がその言葉を言い終わらないうちに、生徒に引っ張られるように一人の男性教師が出てきた。
「おい、お前ら、ここをどこだと思ってるんだ! 校庭にいきなりバイクで入るなんて、何考えてるんだっ!」
体格の良い教師は、威嚇するように大声を出して、バイクの上の男を睨みつけた。
「警察を呼んでも・・・お、お前、柏原か!?」
2年の学年主任で体育教師の富田は、それが学年きっての優等生だと知ると、唖然とした表情になった。副生徒会長の優等生がなぜ、バイクで学校に乗り込んできたのか・・・それに、後ろには裸の女子を乗せている・・・パンティも身に着けていない、素っ裸だ・・・

 「富田先生! お願いです、何も聞かないで、この子を保健室に連れて行かせてください、お願いします!」
柏原はバイクに乗ったまま、深々と頭を下げた。後ろの梨沙の喘ぎ声が皆に聞こえないように、バイクのエンジンはあえて止めなかった。
「それから、今すぐ門を閉めてください。追われているんです!」

 「お、お前・・・」
一瞬たじろいだ富田だったが、柏原の必死な眼差しに、すぐに黙って頷いた。
「・・・分かった。・・・おい、お前とお前、バッグに入っているスポーツタオルを出せ!・・・それから、山口、お前は二宮先生にお願いして、保健室には他に誰も入れないようにしてもらうんだ! あと、お前は、教員室に行って、西田先生を呼んで来い!」
富田は口早に周囲の生徒に命令すると、大きく手をあげた。
「はい、他の生徒は今すぐ解散! 今見たこと、絶対に誰にも言うなよ!」
さらに富田は携帯端末を取り出し、素早く操作した。
「・・・ああ、警備員さんですか、富田です・・・先ほどのバイクの二人は私の方で確保したので心配ありません。ただ、正門は今すぐ閉めてください。生徒達は通用門を通らせてください。」

 ・・・柏原と梨沙の二人は、富田の咄嗟の判断に救われることになった。梨沙は二人の生徒に借りたスポーツタオルを借り、ヘルメットを被ったまま、身体を隠しながらバイクから降りることができた。
 そして、西田先生に人払いをお願いして、柏原と梨沙は誰にも会わずに保健室に着くことができた。また、今日は養護教諭が休みだったため、代理の二宮先生に話し、しばらく二人を保健室の中で二人だけにするように依頼した。

 「おい、柏原、後でちゃんと説明しろよ。それから、間違っても保健室で変なことするなよ!」
二人の後ろ姿に声をかけながら、富田は少女の大きめの尻を思い出していた。まさか、あの子、谷村梨沙なのか・・・切なそうな声もよく聞くと、あの美少女生徒会長の声のように聞こえた。あれは間違いなく、感じている女の声だった。一体、何が・・・
 その時、ポケットの中の携帯電話がけたたましく鳴った。それは、正門に不審な白いワゴンが来て、中に入れろとごねている、という警備員からの連絡だった。富田は少女の後ろ姿を名残惜しそうに見てから、正門に向けて駆け出した。

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 柏原は、喘ぎながらよれよれと歩く梨沙に肩を貸しながら何とか歩き、ようやく保健室に辿りついた。コンコン、とノックすると、はあい、と中から二宮先生の声が聞こえ、がちゃっと鍵が開く音がした。

 「さ、中に入って。富田先生から話は聞いているわ・・・」
20代半ばの美人英語教師、二宮仁美は後ろの裸の少女の姿を見て少し黙った。その少女は、ヘルメットを被ったま、足を内股にしてがくがくと震わせて何とか立っていた。そして、熱でもあるかのように熱い喘ぎ声を漏らしていた。
「・・・柏原君、あなたを信じるからね。しっかり守ってあげて。鍵は私が持っているけど、内側から閉じてもいいから。」
仁美はそれだけを言うと、部屋を立ち去ろうとした。そしてふと足を止めると、柏原の耳元に口を寄せ、小声で囁いた。
「あ、芳佳ちゃんには私から連絡しておくからね。」
え、と驚く柏原に、仁美は小さくウインクした。


 仁美が保健室から出ていくと、柏原はがちゃりと鍵を掛けた。これで、保健室の中には、自分と、素っ裸の梨沙の二人きりだ・・・柏原は思わず、下半身が興奮してくるのを堪えながら、梨沙に肩を貸し、ベッドに座らせた。
「さ、もう大丈夫だよ、梨沙ちゃん。」
柏原はそう言うと、梨沙のヘルメットの首紐を外し、ヘルメットを持ち上げた。

 「あ、ありがと・・・あ、あっ、ああんっ・・・」
ヘルメットが外された梨沙の顔は真っ赤に上気し、可愛い唇は半開きになって喘ぎ声を漏らしていた。ベッドに座った腰はグラインドのように前後にくねっていた。
「い、いや、見ないで・・・あっ、あぁあ・・・お願い、カーテンを閉めて・・・」

 そう言われた瞬間、柏原は弾かれたようにベッドから立ち上がった。ついいやらしい目で梨沙の身体を見てしまったのを気付かれたような気がした。このまま押し倒したい・・・ほんの一瞬であるが、そう思ってしまった柏原だった。
「あ、ご、ごめん!」
柏原はベッドを2辺から囲むカーテンを引っ張ると、その外側の椅子に腰掛けた。
「俺、ここで待っているから。あいつらがどこから来るか分からないから、ごめん、ここにはいさせてもらうよ。」

 「・・・う、うん、分かった・・・あ、あぁん・・・」
カーテンの向こう側から、少女の小さな声が聞こえた。
「柏原くん・・・あ、あぁ・・・私のこと、軽蔑しないで・・・あっあっ、あぁ・・・」

 「分かってるよ、大丈夫。アイリスの奴らになんかされたんだよね? 軽蔑なんてしないから・・・」
柏原は、できるだけ平静を装ってそう言ったが、心臓の鼓動がいつになく速まっていた。さっきまでは逃げるのに必死だったからそんなことを考えている余裕はなかったが、今は保健室で二人きりなのだ。緊急事態でやむを得なかったとは言え、16歳の女の子を裸のままでバイクに跨がらせ、新宿から渋谷、さらには通っている学校で晒し者にしてしまった。大好きだった女の子は、裸で後ろからぎゅっと抱きつき、背中に乳房を押しつけ、身体をくねらせては悶え、喘いでいた・・・薄いシャツ越しに感じた梨沙の乳房と乳首の感触を柏原は思い出していた。
 そして今、薄いカーテンの向こうで、梨沙ちゃんは素っ裸のまま、今にもイきそうないやらしい喘ぎ声を漏らしている・・・高2の男子にとって、興奮するなという方が無理なシチュエーションだった。


 ・・・一方、梨沙はベッドに座りながら、辛い状況に困惑していた。一刻も早く、秘裂の中のローターを取り出す必要があったが、そのためには、自ら指を挿入しなければならない。薄いカーテンのすぐ向こうには、柏原が座っているのだ・・・気づかれないようにしなければ・・・友達という以上に親しく、告白もしてくれた男子に、まさか膣の中に異物を入れられているなんて、絶対に知られたくなかった。


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