PART 38(bbbb)

 梨沙はそれから、仁美と一緒に、保健室で30分ほど待機した。まだ生徒が残っているかもしれないので、さっきバイクの後ろに乗っていたのが梨沙だと思われないように、帰る時間をずらした方が良い、という仁美のアドバイスに従ったのだった。
 梨沙は二つのタオルを巻いて胸と下半身を隠し、ベッドの端に座っていた。隣に仁美がそっと座り、梨沙から話さない限り、何も言わずに肩を優しく抱き続けてくれた。

 そもそも、なぜ仁美は、ヘルメットを被っていたのに梨沙と分かったのかを聞くと、芳佳から連絡があったから、とのことだった。もしかしたら、学校に柏原と梨沙が行くかもしれないから、助けてほしい、と直前に電話があったと。

 また、柏原とのことも諭された。
「何があったか知らないけど、柏原くん、あなたを助けるために一生懸命だったわよ。それだけは分かってあげて、ね?」
仁美はそう言うと、梨沙の両肩を軽く掴んだ。
「・・・それにね、好きな女の子が目の前で裸で寝てたら、男の子がどうなっちゃうか・・・少し、大目に見てあげてもいいかもね。」

 しばらくすると、保健室の扉がコンコンとノックされた。仁美はカーテンを閉めると、一人で来訪者と対応した。

 その後、仁美は新しい制服と下着を渡してくれた。

 一体、これはどこで、誰が用意してくれたのか・・・仁美が教えてくれなかったため、梨沙は不思議に思いながらもその服を着て、下校したのだった。

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 その制服を手配したのは芳佳だった。二人が保健室に入った後、仁美が芳佳に連絡し、服を買ってくるように依頼したのだった。
 ただ、梨沙との接触をアイリス側に悟られることを恐れた芳佳は、紀子に電話をして、自分の代わりを依頼した。紀子は制服と下着を買うと、職員室に行き、富田にそれを渡した。富田がそれを保健室に持って行ったのだった。

 芳佳はその時、自分の父、須藤道雄の勤める会社に行き、無理やり頼んで時間を作ってもらっていたところだった。そこで芳佳は、今日の遊園地での出来事について、梨沙が全裸で駆けだしてきたこと、背後にいた敵は、写真家の野々村であり、さらにはアイリスグループであること、を伝え、こうなった以上、すぐに解決に向けて手を打って欲しいと懇願した。

 アイリス、という言葉を聞いて道雄はぴくりと反応し、それなら自分の人脈を使って何とかできそうだと答えた。

 それじゃあ後は任せておけと腰を上げかけた道雄に、芳佳はもう一つ、打ち明けなければいけないことがあった。
それは、芳佳が最近、電車の中で悪質な集団痴漢に遭い、恥ずかしい写真を撮られてしまったということだった。驚愕する父に向け、芳佳はその後にメールで送られてきた写真を携帯端末の画面に表示して見せた。それは、満員電車の中で人の壁に囲まれ、スカートを思い切りまくり上げられている写真だった。さらにもう一枚、ブラウスのボタンを外されてはだけられ、ブラジャーが露出している写真も見せた。

 父親とは言え、男性にそんな写真を見られて、芳佳は恥ずかしさに真っ赤になった。しかし、これ以上の写真は撮られていないこと、アイリスはこの写真をネタにお父さんを脅してくるかもしれないことを伝え、自分はこの写真がネットにばらまかれてもいいから、絶対に脅しに屈しないで、梨沙を守ってほしいと訴えた。また、それ以上に過激な写真を見せてきたら、それは絶対に合成だから、騙されないように付け加えた。

 しばらく唸っていた道雄だったが、最後には心を決め、芳佳の頼みを全面的に引き受けることを約束してくれた。

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 道雄の動きは素早かった。まず、Fテレビの営業部長に電話をかけ、無理やり頼み込んで、今晩、付き合ってもらうことを了解してもらった。さらに、その場に、アイリスグループの幹部を呼んでもらうようにお願いした。え、あの話、そんなに急に進めなくても・・・と、営業部長はそのあまりの性急さに驚いたが、大手広告代理店の幹部に頼み込まれては了解せざるを得なかった。

 その夜。都内の料亭では、大手広告代理店、Fテレビ、アイリスグループそれぞれの幹部が会合を持つことになった。
 その場で道雄は、現在交渉中である、Fテレビとアイリスグループの業務提携を協力に支援することを約束したのだった。そして、その具体策として挙げた数々の魅力的な施策に、Fテレビとアイリスの幹部は目を丸くした。もともと、視聴率低迷に苦しむFテレビは刺激的なコンテンツを欲していて、アイリスグループは、AV産業の市場飽和の壁という課題に苦しんでいたため、お互いの提携を希望していたのだった。

 願ってもない提案に喜ぶFテレビ幹部に、道雄は一つの依頼をした。それは、アイリスの幹部、特に社長の葉川真樹を厚遇することだった。Fテレビ幹部は、その場でいくつか電話をかけ、真樹をFテレビグループの幹部として迎え入れることを決定した。

 想像以上の厚遇に顔をほころばせている真樹を見ながら、道雄は頃合いを見て、一つの条件を提示した。当たり前のことでありますが、と前置きしながら、提携後のアイリスが公序良俗を乱すようなことが絶対にないように、というものだった。
 具体的には、以下のとおりだった。
・アイリスグループを2つに分け、一つは水着までの健全な作品を提供する会社として、もう一つは従来のアダルトビデオ制作会社とする
・アダルトビデオ制作会社は表向きにはFテレビグループとしない。ただし、迂回を重ねて実質的には十分な出資を行い、経営面・営業面でも実質的な連携を行う
・また、アダルトビデオ制作会社も、絶対に法律は遵守すること。

 すべての条件を呑むと約束した真樹に、道雄は世間話のような語り口で本題を切り出した。
「・・・ただねえ、葉川さんはそうおっしゃいますが、現場レベルではちょっと無茶をしているような噂も聞こえてくるんですよ・・・今日、新宿の遊園地であったイベント、結構な騒ぎになっていますよね・・・」
道雄はそう言うと、携帯端末を取り出し、一枚の画像を表示した。それは、バイクに乗って走る二人組の写真だった。そして、後ろに乗っている女の子は、何も身に着けない、素っ裸だった。
「どうも、この子は素人だそうですね。しかも高校2年の16歳だとか・・・SNSに出回っちゃってるみたいですけど・・・こういうことがあると、ちょっと社内の説得が難しくなってしまうんですよねえ。葉川さんの指導力にもちょっと疑問符が付いてしまうというか・・・」

 意表を突かれた真樹は、慌てて二人に謝罪した。そして、この女子高生には二度と手を出さないことと、今回の件の首謀者には厳しい処分を下すことを約束したのだった。

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 その日の夜遅く、黒川は一本の電話を受けた。それは、親会社の社長の真樹からであり、その内容は、今後一切、谷村梨沙には手を出すな、という指示だった。さらに、そもそもそんな無謀なイベントを企画したこと、挙げ句には素人の女子高生を裸で逃がし、世間を騒がせた失態を責め立てた。

 「そんな、急に言われても・・・だいたい、今日のことだって、社長自らの指示のとおりにしただけじゃないですか。どうやって梨沙を罠に嵌めるかもきちんと説明しましたし・・・まさか、裸で園の外に逃げるとは思わなかったので・・・それに、同級生がバイクで待っていて、まさか、学校の中に逃げ込むなんて、予想できませんよ。」
真樹のあまりの言い草に、黒川は思わず口答えした。

 しかし真樹は、言い訳するな、無茶な企画をして素人に逃げられたのは黒川の責任だと言って取り合わなかった。また、梨沙から手を引く理由をしつこく尋ねた黒川に、機密事項だから言えない、と突っぱねたのだった。

 電話が切れた後、納得のいかない黒川は、アイリスグループのスタッフに片っ端から電話し、真樹の今日の動向を探った。そして、どうやら真樹は今日、急遽別の予定をキャンセルして、Fテレビの幹部と会ったらしいという情報を得た。

 ・・・それだ、それが理由に違いない・・・きっとFテレビの幹部から、今日のイベントのことを非難され、提携話の解消をちらつかせられた・・・慌てた真樹は、その場で善処を約束したのだろう・・・ということは、まさか社長、俺に責任を押しつけて、切るつもりか・・・

 そこまで考えると、黒川は携帯端末を取り上げ、再び電話をかけ始めた。ふざけやがって、絶対に思い通りにはさせねえ・・・

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 同じ日の夜。柏原は自宅でベッドに横たわっていたが、全く寝ることができないでいた。
(梨沙ちゃん・・・)
真っ暗な天井を見上げながら、柏原の脳裏には、梨沙の裸身が鮮やかに蘇っていた。

 遊園地から出てきたときの、入り口の柵の上での鮮烈な全裸姿・・・真っ昼間の道路を全裸で、手だけで胸と股間だけを隠して走る姿・・・そして、保健室で見てしまった、あまりにも淫らな痴態の数々・・・膣の中の感触、クリトリスを弾いたときの可愛い悲鳴、乳房を揉んだ時の甘い喘ぎ声・・・イく直前は、あっあっあって可愛い声を連続して出すんだよね・・・そしてその瞬間は、顔をうんと仰け反らせて、全身をぴーんと張って・・・その後は、ぴくぴく全身を震わせながら、うっとりした顔で寝ちゃうんだよね・・・

 想像したら梨沙に悪いと思いながら、柏原は興奮に耐えきれず、何度もトイレに駆け込んでしまった。そしてトイレから出てくる時には、変態、ドスケベ、と怒りに燃えた目で蔑む梨沙の顔が浮かぶのだった。

 梨沙ちゃん、まだ怒ってるかな・・・でもひょっとしたら、少しは許してくれる気になってるんじゃないかな・・・キスをしようとしたことくらい・・・おっぱい触ったことだって、優しく揉んだだけだし・・・

 いや!・・・柏原は、もう一つの罪を思い出した。ローターを取るためと称して、つい、梨沙に信じられないほど恥ずかしいポーズをさせてしまったんだ・・・M字開脚、四つん這い尻上げ大股開き・・・片足上げ立ちバック・・・まんぐり返し・・・冷静に考えれば、そんなポーズになったからって、ローターが出てくると思うのがおかしいような気がした。

 柏原には自覚があった。ずっと前から梨沙に惚れていた柏原は、AVでも、ショートカットで黒髪で清楚風のAVアイドルのファンになり、出演作品を沢山見ていた。その中で、AV女優と梨沙を重ね合わせ、こんなエロいポーズをいつか、梨沙にさせてみたい・・・そう思っていたポーズを全て、今日の梨沙に本当にさせてしまったのだ。唯一、騎乗位だけはできなかったが、考えて見れば、無理やりバイクの後ろに跨がらせ、ローターが入っている股間をバイクの振動で責め立て、身体を上下させて自分の背中に擦り付けさせたのだから、それもさせたと言えるかもしれなかった。

 そこまで思った柏原は、真っ暗な中で手探りで携帯端末を探し、画面を付けた。そして、今日、SNSを漁って保存した、沢山の画像を眺めた。
 ・・・それは、全裸でバイクに乗る少女を新宿や渋谷で撮影した写真だった。全裸の横からの姿、真後ろからの姿、スクランブル交差点で接写し、尻がドアップになり、溝まで映っている写真・・・梨沙ちゃん、ごめん・・・だけど、すぐに削除されちゃうから、見つけ次第保存するのに忙しくて、百枚以上保存しちゃって・・・

 しかし今度は、そのまま携帯端末を持ってトイレに籠もってしまったのだから、柏原は全く矛盾していた。保健室で梨沙が失神していた時、触るんじゃなくて、写真を撮っておけばよかった・・・そしたら、可愛いピンクの乳首のおっぱいも、思いっきり開いたあそこの中も、まんぐり返しも永久保存できて、いつでも見放題だったのに・・・柏原は何度もそう後悔し、次の瞬間、そんなことを考えた自分を責めたのだった・・・

 さらに、柏原は、あることを調べたくで、ネットを検索してしまった。「数の子天井」・・・梨沙のアソコの中に指を入れた時、周囲の肉壁がぎゅっと絡みついてくるのを感じた。その時、上部側が少しざらざらしているような気がしたのだ。そして、調べた結果はやはりそれは、数の子天井で間違いないように思われた。またそれは、男性が挿入すると、天にも昇るような快感が得られるらしいこと、1万人に1人の名器と言われていること・・・自分しか知らない梨沙の秘密に、柏原はまた興奮した。

 また、柏原はもう一つ、罪を犯していた。保健室の隅で拾ったピンクローターを家に持って帰ってきて、机の奥に大切に保管していたのだ。あの時は、梨沙に激しい剣幕で責め立てられ、思わずそのまま持ってきてしまったのだが、それが梨沙の秘裂の中に入っていて、何度もイかせたものだと思うと、どうしても捨てられなくなったのだ。

 柏原は机の電気を付け、もう一度ピンクローターを取り出した。それはまだ、梨沙の愛液が乾ききっていない部分が僅かにあり、一部の面がねっとりとしていた。梨沙ちゃん、辛かったね・・・柏原はそう思いながら、ローターの取っ手近くの小さなボタンを押した。ブーン、というモーター音を発してローターは振動を始めた。でも、これのおかげで、梨沙ちゃんがイくところ、何回も見れたんだよな・・・初めてイく直前、梨沙ちゃんが俺のことを見て、驚いたような恥ずかしいような顔、可愛いかったな・・・

 その時、ふと柏原の頭に、いけない妄想が浮かんだ。もし、これを梨沙ちゃんのあそこの中に入れて、生徒総会で演説させたら・・・そして、自分がリモコンを操作して、全校生徒の前でイかせちゃったら・・・いや、イく寸前で止めて、イくところを見られたくなかったら、全校生徒の前でストリップしろ、って命令したら、梨沙ちゃん、どうするかな・・・案外、すっぽんぽんになったりして・・・可愛い顔を真っ赤に染めて、恥ずかしさに脚をがくがく震わせて・・・一枚ずつ服を脱いでいって、最後は泣きそうな顔で、パンティをゆっくりと下ろして・・・そしたら今度は、M字開脚でオナニーをしながら演説をするように命令して・・・あ、まんぐり返しでローターを飛ばす芸も、やらせてみようかな・・・梨沙ちゃん、その時どんな顔するかな・・・それから、・・・・

 パチーン!、と思い切り叩かれたような気がして、柏原は思わず手で頬を押さえた。そしてすぐ、それは気のせいだと分かった。
(ごめん、梨沙ちゃん、もう変なこと、考えないから・・・)
柏原は、宙に浮かんで見える、梨沙の怒った顔を見て謝った。しかし我ながら、大好きな女の子の魅力的な素材がこれだけ揃っているのに、また変なことを妄想しない自信は全くなかった。

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