PART 44(bbbb)

 それからの20分間は、梨沙にとって、まさに羞恥地獄だった。スクリーンに映し出されている動画は、確かに、さっき梨沙が話した内容の一部だった。しかし、動画を大画面で上映され、梨沙が恥ずかしくて説明を省略した部分が次々に明らかになっていくにつれ、生徒達の視線は、すっかりスクリーンに釘付けになってしまっていた。

 雲梯の後の動画の内容はだいたい以下のような感じだった。

・黒いフィルムの囲いの中での生着替えでは、まず、ブラとパンティを脱がされ、囲いの中で素っ裸になってしまった。脱ぎたてのパンティを観客に投げるシーンも映された。そのままで、バスケットボールでシュートしたり、頭を頭の後ろに組んでバスケットボールを足の間に挟んだり、Y字バランスになって片足を垂直に上げたり、大股開きで身体を前に倒して足の間だから顔を出したり・・・囲いがなければ、AV女優としか思えないポーズが連続で映し出された。最後に、Y字バランスのままで、脱いだパンティを輪投げするゲームが映し出され、体育館で梨沙の映像を見ていた女子達は、思わず悲鳴をあげてしまった。

・梨沙はワンピースの水着に着替えたと言ったが、実際にはスクール水着であり、生地が薄くて小さく、いやらしいものだった。

・次のゲームの内容を梨沙ははっきり言わなかったが、それは丸太渡りであり、梨沙は後ろ手錠で大股開きで跨がり、騎乗位のように身体を上下に動かしていた。

・丸太の上で大股開きのまま、宙にぶら下がったアイスキャンディーを口に頬張る、疑似フェラ。

・スクール水着が破れてしまい、後ろ手に拘束されているため、男達にプールの中で着替えさせられることになった。「他人手ブラ」状態になり、男に生乳を揉まれて悶える。さらにスクール水着をはぎ取られ、股間まで男の手で隠してもらうことに。

・着替えさせられたのは黒い極小紐ビキニ、乳輪がようやく隠れるだけのトップと、股間がようやく隠れるだけ。さらに、わざとボトムの紐を解かれ、再度着させてもらうときに、ローターを挿入されてしまった。(ローターを挿入した男は、挿入前にピンクローターを大きく上げ、ギャラリーに見せていた。そして、水の中に手を入れて、梨沙にボトムをはかせ、再度手を上げて見せた時には、何も持っていなかったのだ)

・<実はビキニの上下には、恥ずかしい媚薬がたっぷり染み込ませてありました>のテロップが表示。丸太の上で、ローターを膣の中に銜え、上下の媚薬責めで感じてしまい、あん、あん、と喘ぎながら疑似騎乗位を披露する梨沙。今度は紐ビキニなので、身体が上下するたびに乳房が大きく揺れ、乳輪が見えそうになる。

・さらに、開ききった両脚を左右の男が抱え、ぐいぐいと下に引っ張る『疑似三角木馬責め』

・両腕も握られて身体を前に倒され、両腕と両脚で丸太を抱く格好にされ、丸太を左右に回され、乳首とクリトリスを責められ、媚薬とローターの効果もあって、許してぇ、と切ない悲鳴をあげながら、疑似四つん這いポーズを披露

・・・その後は、会場から抜け出し、卑猥な水着姿で逃げ回る姿だった。そして、突然水着を脱ぎ、両腕だけで身体を隠し、尻丸出しで走る姿が続いていた。

それぞれのシーンごとにエッチなテロップを入れられ、強制されて仕方なく言った口上を流され、梨沙は消えてなくなりたい気持ちだった。

 「・・・どうだ、K附高校の皆さん。これが、お前らのアイドル、谷村梨沙の真の姿だ。こんなことをされて、嬉しそうに喘いで素っ裸になる女、生徒会長として信用できるか?」
しんと静まった体育館に黒川の声が響いた。
「・・・で、梨沙。今の動画、ネットに流してもいいか? 今ここで、高校のお友達の前だけでストリップした方がいいんじゃないか? どうせ、裸を見られたのと変わらないだろ、ここまで見られたら?(笑)」


 梨沙の答えを待つように、再び体育館が静まった。大スクリーンに表示された恥辱の映像の数々は、軽々しく、頑張ってと応援することを拒んでいた。皆、気持ちは梨沙の味方だったが、男子達は全て、その動画を瞬きも惜しんで見つめて、不謹慎ではあるが、愉しんでしまった。また女子達は、自らが梨沙になったつもりで追体験し、あまりの恥辱に絶句していた。・・・裸を映されてはいないものの、全裸の身体を男に触られ、恥ずかしい水着でいやらしいポーズをさせられ、秘裂に異物を入れられ、性感に悶えて喘ぐ姿まで晒される・・・それは、16歳の女の子にとって、死ぬより辛いことのように思われた。

 梨沙ちゃんは、黒川の脅しに屈して、ここでストリップすることを選ぶのではないか・・・多くの生徒がそう思い始めていた。もしそうなっても、誰も、梨沙を淫乱とか露出狂とか、非難する者はいないだろう・・・


 一方、梨沙は全校生徒の視線が集中するのを感じながら、目の前がぼうっとかすんでくるのを感じていた。しかしその時、生徒達の集団の中に、柏原の顔を発見した。柏原は、悔しそうに顔をしかめ、目をつぶっていた。・・・見ないようにしてくれていたんだ・・・ありがとう・・・その瞬間、梨沙の中で何かが吹っ切れたような気がした。

 梨沙は顔をあげると、どこにいるか分からない黒川に宣言した。
「私の答えは変わらないわ。絶対に、あなた達の脅しになんて屈しない。ネットに流したかったら、好きにすればいいわ。だけど私は16なんだから、罪が重くなるわよ!」

 その瞬間、体育館の中の緊張がふっと解けた。何という心の強さ、気高さなんだろう・・・自分が犠牲になっても、風紀を乱す存在には妥協しないというなんて・・・

 実は、冷静になった梨沙の頭には、一つの計算があった。黒川は、何か別の狙いがあって、私のこの画像や動画はそのためのカードなのだ。しかも、たぶん唯一のカード・・・それならば、すぐにネットに流すはずがない。そうしたら、使えるカードを自ら捨ててしまうことになるのだから・・・梨沙はその可能性に賭けてみることにした。
「ほら、早く流しなさいよ。私はいいわよ。少なくとも、自分から進んでしたことじゃないって、みんな分かってくれたんだし。」
梨沙がそう言うと、体育館の中は歓声と拍手に包まれた。


 『ほう・・・まだそんなことを言うのか・・・』
黒川は、梨沙の意外な言葉にどこか感心したような口ぶりだった。
『なかなか見所があるな・・・お前が仲間だったら良かったんだがな・・・仕方ないな、俺の誤算だ・・・』

 (・・・え?)
黒川の様子が少し変わったことに、梨沙は微かな希望を感じた。もしかして、私の覚悟を聞いて、諦めたということ・・・?

 しかし、次の黒川の言葉は予想外だった。
『この手はあまり使いたくなかったんだが・・・あまり素人を巻き込むのは好きじゃないんでね・・・』
その言葉と共に、大スクリーンの画像が切り替わった。それは、風にスカートがめくれてパンティが半分露出している女子の写真だった。顔にはモザイクがかけられているが、制服はK附のものだった。

 「え、ちょっと、何のつもり?・・・」
梨沙は意外な展開に慌てて言ったが、画像はスライドショーに次々に切り替わった。

・日常:階段の下からのパンチラ、薄着のブラウスから水色のブラが透けてる写真、授業中に足を開いた姿の正面からの写真
・テニス:スマッシュをしてアンダースコートに包まれた尻が露出した写真、サービスを打つためにトスを上げた瞬間に胸が張って乳房の形が浮き出た写真
・水泳:準備運動で伸びをして全身のラインがくっきり浮き出ている写真、プールから上がる時に片足を大きく上げて水着が食い込んで尻肉がはみ出ている写真
・新体操:逆さになって180度の大股開き、リボンを身体に巻き付けてY字バランス、棍棒を持っての尻突き出しポーズ、ボールを背中に乗せて四つん這い
・バレーボール:レシーブで後ろに転んで背中を床につけ尻を宙に突き出している写真、横に倒れて片足を上げて開いた瞬間の股間を捉えた写真
・陸上:クラウチングスタートでウエアが食込みパンティがはみ出している写真、走り幅跳びで足を開いて飛んでいる瞬間、

 やめて、やめなさいっ・・・梨沙は何度も制止の声を上げたが、K附女子の羞恥写真は容赦なく表示され続けた。いずれも顔にモザイクはかかっていたが、それでも誰か特定できる写真が何枚もあった。しかも、標的になっているのは、いずれもそのクラスや部活で1,2を争う可愛い子ばかりだった。

 それは、男子達にとってはあまりに目の毒な写真だった。女子達の視線が気になるため、じっと見ることはためらわれたが、ちらちらと見るのをやめることはできなかった。やはり、1枚でも見逃したくなかった。
 また、自分の画像が表示された女子は必死に悲鳴を我慢し、それが自分であることを悟られないように必死だった。それでも、気づいてしまった男子達がちらちらと見てくるのを感じ、いたたまれない気持ちになっていた。その他の女子は、盗撮画像が可愛いと評判の子ばかりであることに気付き、自分の画像が無いことにほっとするとともに複雑な気持ちになっていた。

 2分ほどのスライドショーの上映の間に、体育館の空気は微妙に変わっていた。

 『どうだ、K附の女の子のエロ画像スライドショー、男子のみんなには気に入ってもらえたみたいだな?』
黒川の声がスピーカーから響いた。
『梨沙、お前が俺たちに歯向ってきたんで、念のために撮っておいたのがこの画像だ。女子のみんなは、こんな被害にあってもまだ、生徒会長さんの味方なのかな?』

 「あ、あなた達・・・ひどい、最低・・・」
梨沙はわなわなと震えた。
「卑怯よ、こんなの・・・私だけを狙えばいいじゃない・・・」
梨沙はそう言いながら、どうしていいか分からなくなっていた。自分の恥ずかしい写真や動画なら、死ぬ気で我慢しようと思った。だけど、関係ない女子の写真まで・・・

 『あはは、卑怯か・・・あいにく、俺たちそんな悪口気にしていたらやってられない商売してるんだよ。甘いな、女子高生のお嬢ちゃんは。』
黒川の馬鹿にしたような声が響いた。
『・・・で、どうする? お前が言うことに従わないんなら、今の写真が全部、ネットに流れることになるぞ。もちろんその時はモザイクは無いからな。あ、テロップでクラスと本名も入れてやろうか?』

 体育館が重い空気に包まれた。梨沙の性格から、他の女子も巻き込んで犠牲にしてもいいと言えるとは思えなかった。・・・と言うことは、やはりここで、全校生徒の前で、ストリップやオナニーを演じることを承諾せざるを得ないのではないか・・・

 その時、体育館の後方から一人の女子の声が響いた。
「私は大丈夫よ!、負けないで、梨沙ちゃん」
それは、2年3組で新体操部の女子だった。新体操部で一番可愛いと評判で、さっき表示された画像の何枚かは彼女の写真であった。特にY字バランスと四つん這いの写真は、表示されたものの中で最も卑猥なものだった。
「ごめん、梨沙ちゃん・・・自分の写真が出て、初めて梨沙ちゃんの辛さが分かったわ。それなのに、流出してもいいって言った梨沙ちゃんはすごいよ・・・ね、みんな!」

 私も平気、私も負けない!、頑張って!、負けないで・・・体育館のあちこちから女子の声があがり、再び皆の気持ちが一つになった。男子達も、興味本意でじっくり見てしまったことを内心恥じていた。

 『・・・やれやれ、お前らは本当に偉いな・・・と言いたいところだが、甘いな、全然。』
黒川の声にはどこか余裕があり、それが女子達を不安にさせた。
『今までの写真はまだまだ序の口だよ・・・俺たちがこれだけしか用意してないと思ってるのか?・・・それじゃあ、これならどうだ?』



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