PART 71

 数分後。有希が目を覚ますと、体の自由が効かず、腕を後ろに縛られたままで立たされていることが分かった。自分の前には、カメラマンの土居、真樹、城田、AV女優と男優、撮影スタッフ・・・皆が自分を見つめているのが見えてきて、がっくりと首を垂れた。やはり、さっきのあれは、夢ではないのだ・・・そしてここは、アダルトビデオの制作会社・・・

 「お目覚めですか、お嬢様? いかがでしたでしょうか、お縄のお味は?」
城田が揶揄の口調で言うと、周囲から失笑が起きた。
「たったの18分でイっちゃいましたね。よっぽど股縄がお気に入りのようで・・・ただ、今はちょっと外していますから、しばらくの間、ご辛抱ください。」

 「・・・も、もう、解いてください・・・」
城田のからかいに付き合う気にはなれず、有希はそう言うのが精一杯だった。これだけ辱めれば、もう十分でしょう。女性に無理やり恥ずかしい反応をさせるなんて、ひどい・・・

 「あれ、有希ちゃん・・・ちょっと、勘違いしてない?」
真樹が少し驚いたような顔で言った。
「有希ちゃん、賭けに負けたんだから、約束は守ってもらうわよ。独占販売権の全額を回収するまで付き合ってもらうことと、緊縛プレイを3時間延長、よね?」

 「え、そ、そんな・・・許してください・・・そんな賭け、まさか本気とは思っていなかったんです・・・」
有希はさっと表情を強ばらせた。自分でも無理のある言い訳とは感じたが、とにかく、この場を逃れないと・・・

 「有希ちゃん、それは駄目だよ。社会人なんだから、口約束だってきちんと守らなきゃ。」
そうきっぱりと言ったのは、カメラマンの土居だった。
「取材をする者にとって、取材対象との信頼関係は絶対だって、研修で習わなかったのかい?」

 ここには味方が一人もいないと悟った有希は、とりあえず指示に従うしかないと観念した。今後のことは、会社に帰ってから相談すれば、きっと・・・
「・・・わ、分かりました。すみませんでした・・・」
有希は仕方なくそう言うと、小さく頭を下げた。濃紺のスーツがはだけられ、白いブラジャーに包まれた乳房が菱形状の縄に囲まれてくびり出されているのが屈辱的だった。(とにかく、早く終わって・・・)

 「そうよ、分かればいいのよ、有希ちゃん。」
真樹はそう言うと立ち上がり、立ち姿で緊縛されている有希の耳元に口を寄せた。
「それじゃあまず、きちんとご挨拶、しましょうね。」

 囁かれた言葉に、有希ははっと目を見開き、いやいやをするように首を振った。しかし、嫌ならいいのよ、あの動画、好きなように活用させてもらうから、と言われては、抵抗できるはずもなかった。
「・・・み、皆様、二階堂、有希は、縄に縛られて気持ちがよくなり、自ら腰を振ってオナニーして、派手にイってしまいました・・・どうかこの露出狂の変態女を、縄責めでうんと調教、してください・・・」
有希は余りの屈辱に声が震え、ところどころで言葉に詰まった。その度に真樹に尻を叩かれ、やっとそこまで言うことができた。そこでまた、ぴしゃりとお尻を叩かれた。い、いや、そんなこと・・・
「そ、それではお詫びとして、有希の、おっぱいと、おまんこを、丸出しにしたいと思います・・・どなたか、よろしくお願い、いたします・・・」

 そして有希は、2台のカメラに記録されながら、ブラジャーをずらされて乳房を丸出しにされ、スカートを捲られ、パンティを下ろされて、裸の股間を露出させられた。
「・・・有希は、縄で縛られたり、裸を大勢の人に見られたりすると、それだけでイっちゃう、変態、です・・・スーツの下には、こんなにスケベな、おっぱいととおまんこを、隠していました・・・」

 「いいよ、有希ちゃん・・・スーツ姿も凛々しかったけど、こっちの方が男受けもいいよ!」
土居が嬉しそうに笑いながら、濃紺のスーツで緊縛され、乳房と秘部を露出した美人社員の姿をカメラに記録していった。ひどいと言いたげに恨めしそうな有希の視線も心地よく感じられた。土居は有希に笑顔を返すと、背後に回った。
「おお、後ろ姿もいいねえ! 上はリクスーに縄で後ろ手縛り、下はぷりんぷりんのお尻丸出し! 会社の男が見たら喜ぶぞ。」


 ・・・まずは、「緊縛調教3時間」が始まった。その進め方は有希にとって少し意外だった。

 「はい、二階堂有希の突撃取材のコーナーです・・・今回は、緊縛教室の第1回、『M字吊り』です・・・」
ビデオカメラが正面から狙う中、有希は強要された台詞を口にした。この前振りらしき台詞が何に使われるのかと思うと不安で仕方なかったが、とにかく今は命令をスムースにこなすことが優先だった。
「城田さん、M字吊り、というのはどのような格好でしょうか?」

 「はい、M字吊りというのは、M字開脚の状態で緊縛拘束し、さらに縄でそのポーズのまま宙吊りにするものです。それじゃあ有希ちゃん、床に腰を下ろして、両膝を立て、左右に大きく開いてください。」
城田がはきはきとした口調で答えた。

 「は、はい・・・」
内心では物凄い抵抗を感じたが、有希はスーツのまま、言われたポーズを取るしかなかった。有希は今、普通のスーツ姿で、薄黒いストッキングを新たにもらって穿いていた。しかし、絶対に笑顔を崩さず、カメラ目線でいること、と命令されていたので、作り笑いを浮かべながら腰を落とし、膝を立ててゆっくりと開いていった。もちろん、タイトミニからは薄黒いストッキングから透けるパンティが見えてしまっている筈だ・・・ところどころで有希の作り笑いが消え、足がカタカタと震えてしまっていた。そしてそれこそが、真樹達の撮影したい表情だった。
「こ、これでよろしいでしょうか?」
思い切って160度ほどまで脚をぱっくりと開いた有希は、作り笑顔を戻してカメラ目線で言った。(ひ、ひい、こんなの、いやあ・・・)

 そして有希はそのまま縄を掛けられ、両膝と股縄、背中を縛る縄の4カ所から延びるロープで空中に引き上げられ、M字開脚のままで宙吊りにされることになった。
「・・・は、はい、M字吊り、の完成です。結び方、分かりましたか?・・・有希はカメラ目線で言ったが、土居のカメラが真下から撮影しているのが視界に入り、唇を噛んだ。(ど、土居さんまで・・・ひどい・・・)

 それでポーズの撮影は終わりではなかった。次は、下着を露出させるシーンの撮影だ。
「そ、それでは、有希の下着を、ごらんください・・・今日の有希の下着の色は、白、です・・・」
有希が命令された台詞を口にすると、黒子のような役どころのAV男優達が、有希のスカートを完全に捲りあげ、薄黒いパンティストッキングをびりびりと引き裂き、次いでスーツとブラウスを大きく開いた。カメラマンの後ろのスクリーンに、自分のブラジャーとパンティ丸出し姿が映っているのを確認しながら、有希はにっこりと笑った。破れた黒いストッキングと太ももの生白さの対比が卑猥だった。
「どうですか、レースの刺繍が可愛いでしょ。ただ、クロッチの上がちょっと透けてるのが・・・恥ずかしいです・・・」
黒い翳りがうっすらと透けているのを見て、有希の笑顔がまた引きつった。

 「おい、恥ずかしそうな顔するなよ。もっと楽しそうに、カメラを見てにっこり笑うんだ。・・・よし、それでもう一回、同じセリフを言ってみろ!」
城田の容赦ない声が飛んだ。


 次は、下着を剥かれ、恥ずかしい部分を丸出しにするシーンだ。
「そ、それでは、このポーズの場合、女性の、オッパイとアソコとお尻がどうなっているか、じっくりご覧ください・・・」
(い、いやよ、脱がさないで・・・)有希は必死に祈ったが、緊縛されて宙吊りにされた状態ではどうすることもできなかった。AV男優が手を伸ばし、まずはブラを押し上げて乳房をブルンと飛び出させ、次に、パンティの左右のサイドにハサミを入れ、腰から引き離した。

 「・・・はい、これが、M字吊りの時のおっぱいとアソコです・・・」
ビデオカメラがひり出されている乳房と大股開きの股間をそれぞれアップで映したのを見て、有希は最後のセリフを口にした。
「それでは、有希のおまんこ、ぱっくりオープン、してください・・・」
すると、パンティを切り裂いた男優が後ろに回り、両手を有希の大陰唇に当て、思いきり左右に割開いた。サーモンピンクの肉壁が露わになり、その襞までもが鮮明にスクリーンに映し出された。

 ようやく最初のポーズが終わって下ろされ、縄を解かれた有希はくたくたになって床に倒れ込んだ。ひ、ひどい・・・恥ずかしい部分が映った映像の流出を防ぐための筈なのに、また秘裂を開いて撮影されるなんて・・・やっぱりおかしい、あんまりよ・・・

 「有希ちゃん、休んでないで早く起きあがってよ。そうやっている時間は、『ロスタイム』にするからね。」
城田はそう言うとしゃがみ、有希の尻を軽く叩いた。
「それに、まだM字吊りは終わってないよ。最後はすっぽんぽんバージョンだから、早く全部脱いで。」

 そ、そんな、許してください・・・有希は瞳を潤ませて懇願したが、やはりそれも無駄に終わった。そして、ビデオカメラに笑顔を向けながらのストリップを強要され、有希はついにAVスタジオで全裸になってしまった。これじゃあ私、AV女優と同じじゃない・・・ぼうっと立ち尽くしていると、有希はまた真樹に尻を叩かれ、悲鳴をあげた。

 「・・・はい、二階堂、有希です。・・・それでは、M字吊り、全裸バージョンをご覧ください・・・」
有希はビデオカメラに向かってそう宣言すると、床に腰を下ろし、自ら脚を開いていった。大勢のスタッフとギャラリーが見守る中、素っ裸になってM字開脚を披露し、カメラに向かってにこにこ笑う女・・・傍から見れば、有希はもはや立派なAV女優だった。

 そして先ほどと同じ手順でM字宙吊りにされた有希は、ポーズの完成を宣言し、さらに男優にぱっくりと秘裂を開かせた。ビデオカメラが、正面から、真下から、後ろから撮影し、有希の痴態を徹底的に記録していく・・・それは、何度されても、死んでしまった方がましに思える恥ずかしさだった。

 「はい、有希ちゃん、よくできました。」
真樹がそう言うと、ぱちぱちと手を叩いた。
「だけどちょっと、最初だけ、有希ちゃんにはお願いしたいことがあるの・・・」
真樹はそう言うと、一枚の紙を有希の前に示した。
「悪いんだけど、これにサインしてくれる?」

 「え?・・・」
秘部も肛門も丸出しのM字吊りにされたままの有希は、そんなことよりも早く下ろしてほしいと思いながらも、真樹に逆らうことはできなかった。その文面を読むと、それは、先ほど緊縛勝負をする前に交わした覚書とほぼ同じだった。ただ、主語が有希になっていて、勝負に負けたことを踏まえ、3時間の緊縛と例の動画の独占販売権を回収するまで撮影に応じることとする。また、その撮影において有希の裸身が映ったデータは一般には流さない、といったことが書かれていた。
「わ、分かりました。サインをしますから、下ろしてください・・・」
有希は屈辱を噛みしめながら、掠れ声で言った。他にも多くのギャラリーが破廉恥な宙吊り姿を見つめてにやにやしているのだ。一刻も早く解放されたかった。

 「駄目よ、有希ちゃん。あなた、さっき覚書に拇印押したくせに、あれは本気じゃなかった、とか言ったでしょう。だから、今度はもっとちゃんとサインしてもらうのよ。絶対に否定できないように。」
真樹はそう言いながら、有希の目の前にサインペンを差し出した。それは、ペン先が毛筆タイプのもので、柄の部分に楕円形の取っ手が付けてあった。
「はい、それじゃあ有希ちゃん、掴んでくれる?・・・城田さん、ゆっくり下ろしてね。」
真樹はそう言うと手を伸ばし、サインペンの柄が上になり、有希の股間の真下に来るところで止めた。

 「そ、そんなっ」
真樹の意図を察した有希はまた悲鳴をあげた。つまり真樹は、秘裂にサインペンを咥えて、それで屈辱の覚書にサインをしろと言っているのだ。

 「なに、その不満そうな顔は? いつも笑顔って言ったでしょ!」
真樹はそう言うと、宙に浮かんでいる有希の尻をびしゃっと叩いた。その勢いで、有希の体がブランコのように揺れた。格好の被写体にフラッシュが連続して浴びせられる。
「あなた、田舎町ではおまんこでお銚子吊りも台車引きも募金箱もできるのに、アイリスでは習字もできないって言うの!?」
あーあ、真樹さん、すっかり新人女優の調教モードだぜ、とギャラリーがひそひそ話し合った。


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