PART 80

 奇妙なランチが始まって3分ほどが経過した。今は12時15分、まだ昼休みが終わるまでは45分・・・有希は時計をちらっと見て絶望的な気分になった。Supershotの担当者達が戻ってくれば、うまく取りなしてくれるのかもしれないが・・・有希は何度か説明を試みていたが、その度に不自然な点を指摘され、言葉に詰まっていた。
「お、お願いです、縄をほどいてください・・・」
有希は何度も懇願したが、ちゃんと説明してくれなかったらだーめ、と明るく言い返され、恥ずかしい部分を晒し続けていた。

 派遣社員の一人がおにぎりをかじりながら、テーブルの片隅に目を向けた。
「そう言えばこれ、何でここに置いてあるの?」
派遣社員はその携帯端末を手に取り、しげしげと眺めた。
「なんか、赤くチカチカ光ってるけど?」

 「あ、だ、駄目です!」
首を曲げて、後ろを見た有希は慌てて言った。アイリスに向けて中継しているその携帯端末は、決して中継を中断しないように真樹から命じられているのだ。
「お願いです、元の場所に置いてください!」

 「ちょっと、それって録画中ってことじゃない?」
もう1人の派遣社員がサンドイッチをつまみながら言った。
「やだ、有希ちゃん、こんなことしてるところ、自分で録画してるんだ! うわ、最っ低!(笑)」

 ・・・そして、なぜ録画しているかを説明しないと、ストップボタンを押すと言われた有希は、仕方なく屈辱の告白をするしかなかった。
「わ、私、二階堂、有希は、・・・縛られて、露出するのが大好きな、ド、ドMの、変態です。・・・どうぞ、私の、恥ずかしい格好を、思い切り嫌らしく、撮ってください・・・あ、ああ・・・」
有希は悔しさと恥ずかしさ、下半身からジンジンと込み上げる快感に、思わず呻き声を漏らした。

 「ふふ、そうだったんだ、有希ちゃん。それじゃあ、アイリスに載っけられた動画も配信中止にならない方が良かったわね。」
「だけどよくやるわねえ・・・会社の会議室でお尻丸出しにして突き出しちゃって・・・(笑)」
「あそこの毛も剃っちゃってるし、本物の変態よねえ。」
「ねえ、遠慮しないで、さっきの続きしたら? ほら、私たちが入ってきた時の続き!(笑)」
「ブラインドも上げたから、気持ちいいでしょ? 自分の職場を見ながらの縄オナニー?(笑)」
「分かったわ、携帯はここに置いてあげるから、うんと嫌らしく腰振ったら?」
悔しそうに唇を噛み締めて首を振る有希の真っ赤な美貌を眺め、派遣社員たちは楽しそうに笑い合った。

 ひ、ひどい・・・有希はあまりの羞恥と屈辱に震えたが、何も言えなかった。彼女たちからすれば、自分のしていることは露出狂の変態そのものに違いなかった。せめて、快感に我を忘れる姿だけは見せまいと誓う有希だった。

 12時25分・・・有希の誓いは早くも風前の灯火になっていた。派遣社員たちがランチをだいたい食べ終わり、のんびりと食後のコーヒーを楽しんでいた。会社内の噂話や男性の話などを談笑しながら、時おりちらりと有希の尻を眺めてクスリと笑っていた。
 
 「・・・ん、ん、んんぅ・・・」
四つん這いの有希の腰がぷるぷると震え、ついに喘ぎ声が漏れ出した。身体中の神経が鋭敏になり、瘤が恥ずかしい3ヶ所を刺激する度に快感が全身に迸った。あ、ああ、どうしてこんなに、気持ちいいの・・・も、もう、駄目、私・・・
「・・・あ、あ、あぁ・・・あっ、あっ、あんっ・・・」
有希はまた、理性が快感に負ける屈辱を味わうことになった。一旦声を漏らし、小さく腰を振り始めると、もはやそれを止めることはできなくなった。

 そしてそれは、派遣社員たちにとって、格好の食後のデザートになった。
「あーあ、ついに自分で腰振り始めたよ、有希ちゃん。(笑)」
「ねえ、ここに座っているとあなたのアソコも丸見えなんですけど、恥ずかしくないの?(笑)」
「可愛く腰振って、いやらしい声出して悶えちゃって・・・こんなの録画して、何に使うのお?」
「うわ、なんかどんどんスケベになっていくんだけど、本気でやるつもり? すごいわねえ(笑)」
「まともな神経持った女の子だったら、絶対にできないわよねえ、人前でこんなこと・・・(笑)」
「ねえ、太ももにだらだら垂れてきてるそれ、何なのかしら、エリート新入社員さん?」
派遣社員は頬杖をつき、コーヒーを飲みながら、可憐な女子新入社員の縄オナニーショーを眺めて嘲った。

 派遣社員たちの言葉なぶりを浴び、時々理性が戻り、いやいやをするように首を振る有希だったが、快感の波状攻撃にもはや抗う術はなかった。有希はいつしか、腰を前後左右に振り、大きく円を描き、少しでも縄が股間に食い込み、瘤が敏感な部分をより強く刺激するように卑猥なダンスを自ら演じるようになっていた。

 「あ、あん、・・・あっ、あうぅ・・・うん、うぅん・・・あぁ、あはぁぁ・・・」
もはや有希は完全に快感の波に呑み込まれていた。こうなっては、もう、行き着くところまで行くしかない・・・も、もう、有希、駄目なの・・・有希は快感を貪るように腰を振り、喘ぎ悶え続けた。派遣社員達の笑い声や嘲る声も、今ではどこか心地良く感じるようになっていた。
「・・・あ、あん、あ、あぁ、はぁ、はぁ、はぁぁ・・・ううん・・・」

 しかし有希はしばらくすると一つの壁に突き当たっていることに気付かされた。四つん這いで脚を開いた状態で腰を振り、股縄に秘部と尻をこすり付けるだけでは、得られる快感に限界があるのだ。図らずも有希は、自らを絶頂の手前まで責め上げる寸止め責めをすることになってしまった。
「・・・あ、あん、あはぁ・・・あ、あん、あんっ、あぅぅ!・・・は、は、はぁぁ・・・」
下半身からじんじんと沸き上がってくる快感に、もはや有希の理性はどろどろに溶けてしまっていた。お願い、有希をもっと感じさせて・・・うんと感じさせて、イカせて、お願い・・・

 「もう、さっきから本気になっちゃって、何してるのよ!」
派遣社員の一人が呆れかえって手を上げ、有希の片尻をぺしゃりと叩いた。

 「あ、あっ、あううっっ!」
全身が鋭敏になっていた有希は、尻への刺激にびくびくと身体を震わせ、背中を弓なりにして嬌声をあげた。
「あ、あん、い、いい、いいっ!」
身体を震わせると縄が激しく食い込み、稲妻のような快感が身体中を何度も駆け抜けた。

 軽く叩いただけなのに有希が激しく悶える様子を見て、4人の派遣社員は呆気に取られた。
「・・・お尻を叩かれるの、そんなに嬉しいの、有希ちゃん?」
「・・・それって、SMの、なんだっけ・・・そうだ、スパンキング、だ!」
「ねえ有希ちゃん、ひょっとして、もっとスパンキング、して欲しいの?」

 「・・・は、はぁ、はぁ、はぁぁん・・・ううん・・・」
図星を指され、有希は懊悩した。すごく気持ち良かった、もっと叩いて欲しい・・・しかしそれをねだることは、あまりにも屈辱的だった。どれだけ蔑まれることか・・・しかし結局、有希の理性の抵抗はそれが最後だった。
「・・・お、お願いです、・・・も、もっと、叩いてください・・・」

 え、何? もっとちゃんと言ってくれなくちゃ分からない、と派遣社員達にからかわれ、有希はさらに露骨な言葉を口にしなければならなかった。
「有希は、縄で縛られて、お尻を叩かれると、気持ちよくなって、イっちゃう、・・・へ、変態です。お願いです、スパンキングが大好きな、有希のお尻、うんと叩いて、ください・・・」
有希は皆の方を振り向いて切なそうにそう言うと、縄一本が食い込んだだけの尻をクネクネと左右に振った。
「・・・ゆ、有希の、おま○こ、もう、ぐしょぐしょなの・・・ほら、エッチなジュースが流れてるの、見えるでしょ?・・・」

 あはは、最低ね、有希ちゃん、恥ずかしいっ、しょうがないわねえ、もうっ、と嘲りながら、4人の派遣社員は有希の尻を叩き始めた。軽く叩くだけなのに大げさに身体をビクビクと震わせ、顔を仰け反らせて悶える有希の姿がおもしろく、4人は何度も有希の尻を叩いた。また、同性ならではの意地悪さを発揮し、尻の中でも骨盤に近い部分など、有希が感じそうな部分を探り当てては、そこを集中的に責め立てたりもした。

 「あ、あん、そ、そこだめっ・・・い、いい、いいいぃ・・・あ、あん、あん、あっ、あぅぅっ」
有希は意地悪な女性達の責めに為す術もなく、あられもない声をあげて悶え続けた。も、もう駄目、私・・・会社の中で絶頂に達してしまうことへの恐れと期待に、有希はもう訳が分からなくなっていた。

 そして最後の瞬間の直前、派遣社員の一人がめざとく何かを発見した。
「有希ちゃん、ほら、向かいのビルの窓際に誰か立ってるよ。ひょっとして、右側の人って鳥飼さんじゃない?(笑)」

 「・・・え? ・・・っ! い、い、いやあっ!」
職場で面倒を見てくれている先輩の姿が、小さくではあるがはっきりと見え、有希は目を見開いた。そしていやいやをするように首を振る。鳥飼はもう一人と窓際に立ち、下の道路の混み具合でも見ているようだった。もし、こっちを見たら・・・
「だ、駄目、やめてください、お願いっ! ブ、ブラインドを下ろしてくださいっ!」
有希は首を曲げ、後ろの4人に向かって必死に訴えた。こんな姿を鳥飼さん達に見られたら、私、もう会社にいられない・・・有希は生きた心地がしなかった。

 しかし、有希のその慌てぶりが、4人の派遣社員にとってはおもしろくて仕方なかった。
「なーに言ってんのよ、あなたがイかせてください、ってお願いしたんでしょ?」
「そうよ、露出狂なんだから、いつもお世話になってる先輩に見られた方が嬉しいんでしょ?」
「なんなら、鳥飼さんに電話してあげようか? 真っ正面の窓をよく見てくださいって(笑)」
「私達も暇じゃないんだから、早くイっちゃってよ。ほら、ほら!」
4人の派遣社員は意地悪く、先ほどよりも尻たたきと性感責めのペースを一気に上げた。
「ほら、有希ちゃん、ここまで来たら、後は自分でできるでしょ? 最後は鳥飼さん達を見ながら、自分でお尻を振ってイくのよ・・・」

 「そ、そんな・・・ひ、ひどい・・・あ、あ、あぁぁ・・・い、いやあぁぁ・・・」
有希は首を振り、唇を噛んで必死に抵抗したが、絶頂寸前まで追い上げられた性感の前には無駄な抵抗だった。自ら意志を持っているかのように、有希の尻をくりっくりっと左右に動き、上下左右に振られたかと思うと、大きく円を描き、縄に自らの性感帯をこすり付ける運動を止めることがなかった。ついに絶頂を観念した有希が、絶望的な視線を向かいのビルに向けた。そこにいる人影は、鳥飼を含めて4人に増えていた。
「・・・あ、い、い、いやあっ・・・あ、あぁぁっ、あはんっ・・・い、いい、いいぃぃ・・・あ、あ、ああぁぁっっ・・・・」

 ついに有希は、昼間の会社の会議室のテーブルの上で、緊縛姿を晒して絶頂に達してしまった。四つん這いの尻を宙に向けて突き上げたまま、身体が時々ぴくぴくと震えているのがまた卑猥だった。

 「あーあ、本当にイっちゃった。」
「うっとりした顔しちゃって・・・すっごい変態だったのね、こんなに可愛い顔して。」
「ねえ、縄がもうぐっしょり濡れちゃってるんだけど、取ってあげた方がいいかな?(笑)」
「うーん、でも、あんまり関わらない方がいいかも。こっちまで変な趣味持ってると思われたら迷惑だし。(笑)」
「でも、ほんとに叩き甲斐のあるいいお尻してるわねえ、有希ちゃん。大きくて白くって丸くって、肌なんかぷりんぷりんしちゃって・・・えい!」
派遣社員の一人がもう一度平手で尻を叩くと、ぱちーんという音が室内に響き、有希の剥き卵のような尻がびくびくと震え、また皆の笑いを誘った。

 「ねえ、この格好、他の男の人にも見せてあげたいと思わない? ・・・有希ちゃんがすっごく見られたくない相手に。」
一人がそう言うと、皆がニヤリと笑って頷いた。


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