PART 5

 第2ゲームが始まった。今のゲームカウントは、浩1−0彩だ。

 ゲームに先立ち、ルールが一つ追加された。それは、ゲームを取ったら一枚服を着ることができるというもので、女子たちからの提案だった。
 男子たちは反対したが、最終的にはチーフの武田の判断でその提案は採用された。

 レシーブの構えを取りながら、浩は真剣な面持ちで考えを巡らせていた。
(追加ルールのせいで、チャンスはこのゲームだけになっちまった。絶対に取らないと)

 一方、アンスコを脱いでスコートの下はパンティだけになった彩は、下半身を気にしながらサーブしなければならなかった。
(足がスース―する……もし捲れたら……)
 彩はとりあえず、ファーストサービスは力を緩め、サービスエリアに入れにいった。

 ボールは浩が構えたところに飛んでいく。
(よし、おあつらえ向きの球! 時間停止はやっぱり必要なかったな)
 浩は得意のフォアハンドでその球を引っぱたいた

(きっとこっちよね)
 思い切り叩いた浩だったが、彩はコースを読み、ボールの落下点に向かって走っていた。ネットの向こうで唖然とする浩の姿が見えた。
(ふふ、甘いのよ。わざとソフトテニスのあなたが引っぱたきやすいところに入れたんだから。カウンターでバックに打ってあげる……)
 彩が軽くラケットを振りぬくと、ボールは見事にストレートに飛んでいった。

(くそ、完璧に読まれた!)
 彩のカウンターに驚きながらも、浩は必死に腕を伸ばし、ボールに食らいついた。相手は女だ、ラリー戦で負けるわけにはいかない……

 そのポイントは、この試合で初めてのラリー戦となった。コートを走り回って頑張った浩だったが、コースを読んで華麗に動く彩が徐々に押していき、最後はネットに詰めながらのバックボレーを決めた。
「えいっ!」
 ボールは鋭角に飛び、サイドラインぎりぎりに決まった。
「よしっ」
 思わず舌を出し、微笑む彩。
(ふふ、あなた相手なら、思い切り走らなくたってポイント取れるのよ)

「かっこいい、若杉さん!」
「軽く打ってきめちゃうんだもんね」
「やっぱりサービスゲームは余裕」
「おいおい、パンチラも見れなかったぞ」
「やっぱ滝沢じゃ無理だろ」
「あーあ、風吹かないかなー」
 心配そうに見つめていた女子たちからは歓声が、男子たちからはぼやきが聞こえた。

(くそ、やっぱり強いな……悔しいけど、やっぱ時間止めるか……)
 浩は彩をじっと見つめた。彩はファーストサーブを打とうとボールを高くトスして、右手ではラケットを構える、いわゆるトロフィーポーズをとっていた。
(時間よ、止まれ!)

 すぐに時間が止まった。

 すっかり慣れた浩は素早くネットの向こうにダッシュしていく。
(どうするかな……サンバイザーはもう動かせないし、ファーストだけミスらせても、セカンドは邪魔できないし……)
 10秒ほど考えあぐねる浩だったが、その間も、サーブを打つポーズのままの彩をいやらしい目で見てしまう。胸を突き出すような格好のため、どうしても視線はそこに集中してしまう。

(やっぱりこの胸、たまんないなー)
 万一、誰かに見られていたらという懸念はあるものの、誘惑に抗うことはできなかった。
(少しだけなら……)
 思い切り手のひらで乳房を鷲掴みにしたかったが我慢して、人差し指を突き出して近づけていった。

 彩の左胸の膨らみの頂点、ここが乳首かな……ついに、浩の人差し指がそこに触れた。人差し指の先が、少し固く小さな膨らみを紺のTシャツの上から捉えた。
(おお、これが若杉の乳首の感触……1センチは動かせるんだよな……)
 浩は夢のような気持になりながら、彩の柔らかな乳首を人差し指の腹で転がした。
(よし、これで感じちゃうかな(笑))
 なおも好色な目で彩の双乳を眺めながら、時間停止解除を待った。

 時間停止解除。

「え、何? いやあっ」
 コートに女性の悲鳴が響いた。同時に、サーブの構えに入っていた彩が身体を縮め、突然ラケットを投げ出した。ラケットはそのまま落ちていき、からからと地面に転がった。放り投げていいたボールもその後を追って地面に落ち、転がった。
 彩は両手で乳房を庇い、口を半開きにして立ち尽くしていた。いつもの溌剌とした様子はなく、怯えたような表情になっていた。
(あ、ああっ……何、この感覚?)
 左の乳首から脳天を貫くような快感が走り、喘ぎ声を漏らさないで立っているので精一杯だった。

 一方、ギャラリーには何が起きたか分からず、あっけにとられて彩を見つめていた。
「なんか分からないけどラッキー」
「おっぱい隠してどうしだんだ?(笑)」
「よし、セカンドしっかりリターンしろよ、浩」

(お、結構感じやすいんだな(笑) 次は思い切り揉んじゃおうかな。お尻も触りたいな……)
 彩が未知の快感に困惑する様子に、浩は会心の笑みを漏らした。指先に残っている彩の乳首のコリっとした感触はまだ残っていた。

 浩のにやけた表情に彩は不審を覚えた。
(滝沢くん、いやらしい目で見てる……ひょっとして、何があったか分かってるの?)
 さっきから、ラケットの面が急に変わったり、急にサンバイザーが落ちてきて目隠しになったり、胸が触られたような感覚を感じたり……普段ならあり得ないことが、全部、このゲームの中での大事な時に起きた……動機があるとしたら、滝沢くん……にやにやしている浩を見ると目が合い、急に視線を逸らすのが見えた。
(まさか……嘘でしょ?)

 混乱した頭のまま、彩はセカンドサーブの態勢に入った。しかし、サーブの最中に突然乳首から快感が電流のように走った記憶がぬぐいきれず、思い切ったサーブが打てなかった。スイートスポットを外れて打たれたボールは力なく飛び、ネットに引っ掛かった。ダブルフォルトだ。
「フィフティオール」
 武田の冷静なコールが響いた。

「若杉がまさかのダボ!」
「調子悪いのかな」
「滝沢、一気にゲーム取れよ」
 男子たちがすかさず囃し立てた。

 サーブの時は、どうしても胸を無防備に突き出す姿になる。うぶな彩は、乳房からの快感がまた起きるのではと恐れ、次のポイントでもファーストサーブをまたも失敗してしまった。
 ネットの向こうで、どこか余裕の表情の浩の様子も不可解だった。実力差は分かっているはずなのに、なぜか勝ちを確信しているように見える……やっぱり、何か秘密があるのでは……それは、さっきからの不可解な現象と関係があるのでは……いや、そんなことがあるはずがない……
 武田に早くサーブを打つよう促され、彩は考えがまとまらないまま、セカンドサーブを放った。

 今度はサービスエリアに打つことができた。しかし、浩のフォア側に力のないサービスを入れただけであり、強打の恰好の餌食になってしまった。
 それでも、コースを読んで必死に返す彩だったが、スコートが捲れないように動きを激しくできないため、強く打つことができなかった。ラリー戦が続き、彩はついにチャンスボールを与えてしまった。

「お、もらった! おりゃ!」
 浩がラケットを振りぬくと、ボールはコートの隅に突き刺さった。

 茫然とボールを見送る彩。
(嘘よ、こんなの……ああ、どうずれば……)
 まさかの展開に、彩は頭の中が真っ白になりかけた。このまま、ゲームを連続して取られたら、一体どんな格好になってしまうのか……

「フィフティ・サーティ」
 武田の声が、サービスゲームでも彩が逆転されたことを伝えた。

 彩15−30浩。

 すでに1ゲームを取られ、アンスコを脱いでしまっている。あと2ポイントでもう1ゲーム浩が取ったら……彩は、トップスを脱いでブラだけの上半身を晒すか、スコートを脱いでパンティ丸出しになるか、パンティを脱いでアンスコの下はノーパンでテニスをするか……男子ギャラリーはいやらしい目で彩の肢体を見つめていた。

 彩はしかし、必死に気持ちを立て直そうとしていた。このポイントを取られたら15−40、いくら浩が相手でもキープは難しくなる……大丈夫、落ち着いて、いつもどおりにサーブを打てばいいのよ……彩は小さく息を吸うと、すっとボールをトスした。まっすぐ上がったボールを見ながら、サーブの構えに入る……今度はうまく打てそうな気がした。

 その瞬間、時間が停止した。

(そろそろ立ち直るかもしれないからな……ここでもう一押ししよう)
 すっかり慣れた浩は素早く彩のそばに駆け寄り、スカートの後ろから手を差し入れた。その勢いにスコートが大きく捲れ上がり、ピンクのパンティに包まれたお尻が浩の視界に晒された。
(おお、若杉のパンティ、今日もエロいな……やっぱりこの、プリプリのケツがたまらん。どうしよう、お尻を触るか、それとも一気にアソコを……いや待てよ)
 パンティに包まれた尻を眺めながら、浩はさっきの彩の視線を思い出していた。
(さっき胸を触った後、あいつ、俺のことを不審な顔で見ていたよな……ひょっとして、気づかれたか?)

 浩はしばらく考えた。
(ラケットの面が変わったり、サンバイザーが突然目隠ししたり、乳首に刺激を感じたり……全部大事なポイントで……やっぱりさっきの若杉の視線、感づいているのかもな……)
 もしばれてしまったら、この後の試合がやりづらくなる。1分間は間隔を空けなくてはいけないことや同じところはいじれないことまで悟られて対策されたら厳しい……いやその前に、身の危険を感じて試合を放棄されてしまったら……しかし、目の前のむっちりした太ももや、パンティからはみ出した日焼けしていない生白い尻肉を眺めていては、理性が欲望に勝つことはできなかった。

(まあ、もう少しだけなら、大丈夫だよな……)
 浩はそおっと彩の下半身に向けて手を伸ばしていき、中指の先で股間をちょんと突ついた。パンティの上からとは言え、憧れの女の子の最も大事な部分の、柔らかな感触に浩は夢のような気持になった。
(うわ、温かくてふかふかで、たまんないな)
 手を引きながら、中指の腹で彩の秘部の感触を楽しんだ。

 時間停止解除。
 その瞬間、浩の身体は移動し、彩とネットを挟んだコートの反対側でレシーブの構えをとっていた。

 一方の彩は、いきなりの快感に膝がくだけ、内股になってお尻を後ろに突き出すポーズになった。
「く、くぅ……」
(え、何、これ!)
 得体の知れない感覚と、スコートが大きく捲れている羞恥に、彩は絶句した。

 彩の真後ろに陣取っていた男子たちは歓声をあげ、可愛い尻を瞬きも惜しんで見つめた。
「おお、若杉のパンティ見えた!」
「今日はピンクか、可愛いな」
「ぷりぷりのお尻(笑)」
「日焼け後のケツ、エロすぎ!(笑)」
「ケツの割れ目にパンティ食い込んでる!」
 男子たちの意地悪な指摘どおり、彩の小さめのパンティはお尻にぴったりと貼りつき、激しい動きで尻の溝に少し食い込んでいた。その結果、日焼けしていない白いお尻の肉が少しはみ出しているのが、あまりに扇情的だった。

 彩はそのまましばらく動けず、高くトスしたボールは地面に落ちていった。股間をつつかれ、秘部を撫でられた感覚が続き、彩は腰をビクビクッと震わせた。
「うわ、ケツ振りサービス!」
「若杉のエロテニス最高!」
「どうしたんですか、先輩」
「ほんと、今日おかしいですよ」
 ギャラリーの男女の声が飛び交い、コートは騒然となった。

 数秒間の羞恥ショーを披露させた後、スコートはゆっくりと落ちていき、再び彩の腰回りを隠した。彩の真後ろにいなかった男子たちが露骨にがっかりした表情を浮かべていた。
「ああ、こっちからは見えなかった」
「前からも風吹いてくれないかなー」
「ちょっとあんた達、いい加減にしなさいよ」
「先輩、体調悪いなら無理しないでください」
 恥辱にゆがんだ表情を浮かべる彩を見ながら、さらにギャラリーは盛り上がる。

「フォルト! 大丈夫か、若杉?」
 審判の武田の声もどこか冷たくなっていた。

 好奇の視線に耐えながら、彩は浩をじっと見つめた。そこには探るような光があった。
(まさか、本当に滝沢くんがしてるの?)

 まともに視線を向けられた浩は焦った。
(やばい、ちょっとやり過ぎちゃったな。すげー疑われてる……ここは平然としないと。)
「どうしたの、若杉? おしっこいきたいの?(笑)」
 浩はきょとんとした表情でからかった。彩の負けず嫌いを計算してのことだ。ここで試合を投げ出されては困るのだから。

 案の定、彩はきっとした表情になって浩を睨んだ。
「は、何言ってるのよ、ふざけないで!」
(まさか、超能力のはずはないわよね。きっとなんかの偶然……絶対に負けないんだから!)

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