PART 6

 彩15−30浩、からの彩セカンドサーブ。

(このポイントを落としたらこのゲームまで厳しくなっちゃう……絶対に取らないと)
 彩はあらためて自分に言い聞かせ、ゆっくりとトスを上げた。しかし、またスコートが捲れ上がるのではないかと思うと腰が少し引いてしまい、トスは前方に流れてしまった。
(あ、だめ!)
 彩は身体を前に倒し、ラケットを必死に伸ばした。この体勢ではボールを強く打つことは難しい。彩はしかたなく、面だけはしっかり作ってボールに当てにいき、相手のコートに入れることを重視するサーブを放った。
(お願い、入って!)
 ボールの行方を見つめて彩は必死に祈った。

 幸いそのボールはサービスエリアのサイドぎりぎりに入った。それは浩のバックサイドであり、さらにゆっくりしたサーブでタイミングを外された浩は力ないリターンを返してきた。

 いつもなら彩にとってはチャンスボールだ。しかし、ダッシュしようとする彩に男子たちのヤジが聞こえてきた。
「若杉、こっちにもパンティ見せてよ」
「エッチな日焼け跡、見たいなー(笑)」
「滝沢、必死にバックでも返したな(笑)」
「まぐれでいいからあと2ポイント取れよ!」

 ほんの一瞬、気がそがれてステップが遅れた。
(あ、まずい!)
 必死に足を伸ばし、ボールを返すだけになってしまった。

 どっちにとっても重要なポイントは、ストローク戦になった。パコーン、パコーンと打球音が青空の下で響き、ギャラリーの首が左右に振られてボールの行方を追っていた。

(余計なこと考えないで、プレーに集中するのよ)
 彩は自分に言い聞かせたが、男子たちのヤジと視線に集中を削がれ、どうしても決めきれなかった。強くスイングしようとすると、スコートが捲れ上がってしまいそうな気がしてしまうのだ。さっきのはアクシデントと諦めるにしても、嫌らしい目で見てヤジを飛ばしている他の男子にまでパンティに包まれた下半身を見られるのはつらかった。

 一方の浩は、徐々に調子に乗りつつあった。彩がとりあえずコートに入れるようなボールばかり打ってくるので、恰好の練習になっていたのだ。徐々にボールとコートに慣れ、浩はタイミングを計っていた。
(よし、次にチャンスが来たら決めるぞ)

(あ、まずい!)
 彩は滝沢の得意のフォア側に緩いボールを打ってしまい焦った。浩が待ってましたとばかりにラケットを大きく引き、体重を乗せてスイングしようとしている……
(絶対にフォアサイドに引っ張ってくる!)
 今、自分はバックサイドのサイドライン際にいる。早く行かないと!

 彩は慌ててダッシュした、予想以上に勢いのあるボールが返ってきた。
(だめ、絶対に取るのよ! 大丈夫、間に合う)
 彩はなりふり構わず、左足一本になって身体を大きく前方に傾け、ラケットを伸ばした……

 その瞬間、ギャラリーから大きな歓声が沸いた。ダッシュして腰を屈めた結果、スコートの後ろが大きく捲れ、お尻が再び男子たちの視界に晒されたのだ。
「おお、若杉のエロケツ!」
「バックに突き出し!」
「こりゃたまらん」
「よし、今度は見れた!」
「くそ、そっちにいれば良かった!」

 囃し立てる声を聞きながらも必死に手を伸ばす彩。しかしボールはそのラケットの先を掠めて飛んでいった。
(あ、ああ、そんな……)
 彩はスカートを押さえながら呆然とした。

「よっしゃあ、実力勝ち!」
「フィフティ・フォーティ」
 浩と武田の声が重なって聞こえた。

 彩15−40浩、ダブルブレイクポイント。

 2本連続でポイントを取らないと、もう一枚脱がなくてはならない……皆の前でトップスを脱ぎ、ブラだけの上半身を晒すなど考えられない。
(スコートの中はもう見られちゃったんだし、気にしないのよ。それに、じっくり見られたわけでもないんだから)
 彩はボールをつきながら息を整え、自分に言い聞かせた。
 高くトスを上げ、背伸びをして一番高いところでボールを捉えた。一気に振り切り、自分の一番速いサーブを放った。

 ボールはネットの上ぎりぎりを越え、センターラインぎりぎりに突き刺さった。
(やっぱり、時間停止を使わないと駄目か……)
 浩はそう思いながらもなんとか面を合わせてリターンを返した。ボールはふわりと上がり、力なくネットを越えて飛んで行った。
(なんとか返したぞ、次も打ち込まれなけば対応できる……)

 しかし彩は、素早く着地点に移動し、ラケットをしっかり構えていた。
「えいっ!」
 気合の声と共に、高い位置から一気に振りぬいた。

 その勢いで、今度はスコートの前が捲れ、パンティの前側が一部の男子に見られた。
「お、今度は前から見えた!」
「あはは、リボン付き(笑)」
「お子様パンティの彩ちゃん(笑)」

 しっかりフォロースルーをして、ボールが決まるのを確認した彩は、ヤジを飛ばす男子を睨んだ。
(ほんとに、バカみたい。気にしないんだから……)
 一方、女子達からは、彩の勇気を称える歓声と拍手が沸いていた。

 彩30−40浩、ブレイクポイント。
 思わぬ熱戦に、ギャラリーは固唾を呑んで二人を見守っていた。

 気合の入った彩の仕草を眺めながら、浩は考えを巡らせていた。
(このポイントで絶対決める……だけど、サーブの時にいたずらするのはもうまずいな……胸、アソコ、ラケット、サンバイザーはもういじれないし……)
 彩のサーブを何とか返しながら、浩は考えた。
(そうだ、靴だ……足を上げた瞬間に止めれば……)

 次のボールが来たとき、浩はコートの反対サイドに大きくロブを放った。彩が大きなステップで落下点に向かうのをじっと見つめる。
(よし、時間よ止まれ!)

 青い靄がかかり、時間が停止した。幸い、彩は大きなストライドで走っている最中であり、右足が地面から離れていた。
 
 浩はダッシュして彩に近寄り、浮いていた右足の靴に後ろから手をかけた。
(地面についてなければ、靴を外せるよな……)
 祈るような気持ちで靴を引っ張った。すると靴は、あっさりとかかとから外れた。浩はつま先の方も引っ張り、靴を足から外した。このまま持っていれば、時間再開と共に自分の身体は一瞬にして反対サイドに戻り、靴は地面に落下するはずだ。
(よし、頼む。転んでくれ……)
 浩は靴を持ったまま祈った。

 時間停止が解除された。

 右足を地面につき、さらに走ろうとした彩は、踏ん張りが効かず異変に気付いた。
(靴が、脱げてる!)
 靴下だけの右足は地面を押さえきれず、前に滑ってしまった。
「きゃっ!」
 彩は悲鳴をあげながらも右足に力を込めて踏ん張り、スイングの体勢をとろうとした。このポイントを落としたらトップスを脱がなくてはならないのだ……

 彩の頑張りは裏目に出た。勢いのついた身体の動きは止まらず、右足を滑らせながら回転してしまった。さらにバランスを崩した身体は前に倒れ、彩は慌てて両手を前に伸ばした……
「痛っ……きゃ、きゃあっ!」
 両手をついて地面に倒れ込んだ。両膝が地面についた衝撃でジーンと痺れた。

 白昼のテニスコートで、男子たちにあまりに刺激的な光景が展開された。美少女が四つん這いで尻を上げ、スコートがすっかり捲れてパンティに包まれた尻が丸出しになっているのだ。しかもピンクのパンティは尻の溝に食い込み、生白い尻肉までもが半分露出していた。日焼けした小麦色の太ももとの対比が刺激的だった。
「おおおっ!」
「これは大サービス(笑)」
「見せてくれるって感じ」
「股間エロ過ぎ(笑)」
「四つん這いケツ上げポーズ(笑)」
「AVかよ」
「はい、ゲーム終了!」
「このままパンティ脱げば?」

「大丈夫ですか、先輩!」
「ちょっと男子、エッチな目で見るのやめなさいよ」
「可哀想、先輩」
 女子達は口々に言って彩を庇ったが、やはりその淫靡な光景に目をやらずにはいられなかった。

「い、いやあっつ!」
 興奮した男女の声に、自分がどんなに恥ずかしいポーズを晒していることを悟ったが、痺れた足はまだ動かない。こうしている間にも、パンティが食い込んだお尻を四つん這いで突き上げ、男子たちにいやらしい目で見られている……
「駄目、見ないで! お願い!」
 彩は四つん這いのままで顔を上げ、男子たちの方を見て懇願したが、それはギャラリーを喜ばせただけだった。

前章へ 目次へ 次章へ

アクセスカウンター