PART 52b

 7時53分。ついに麻衣子は10回目の絶頂に達する姿を披露することになった。
 最後まで、「声」は非情だった。麻衣子がイきそうになるたびに責めを止め、寸止め状態に追い込んだのだ。両手はお尻を自ら開くようにさせたままだったので、麻衣子はマジックから逃れるためには、激しく腰を振るしかなかった。その動きで逆にマジックが尻の中を抉り、麻衣子は全身をビクビク震わせて悶え続けた。結局麻衣子は、マジックに尻を責め立てられて絶頂する姿を全国の視聴者に向けて披露することになってしまった。
 いつしか画面の左上には、「麻衣子の絶頂回数:〇回目」というテロップが表示されていて、それがついに「10回目」と表示された。

 はあ、はあ、はあぁ……あ、あん……荒い息を吐き、時々快感が戻ってきたように可愛い喘ぎ声を漏らしながら、麻衣子はぼんやりとカメラの方を見ていた。
(ああ、まだ終わりじゃないの……ひどい……)
「失礼しました。それでは小西さん、私のお尻の穴の最後の1本、マジックで塗ってください……」
 両手で思い切り尻を開きながら、麻衣子の頭の中は真っ白になっていた。

 引きつった表情の彩香が手を伸ばして掴むと、麻衣子の尻の穴に入っていたマジックは、すぽっとあっさり抜けた。歯を食いしばってじっくりと同僚女子アナのお尻の穴を見つめ、彩香は慎重に最後の一本の皺に極細赤マジックを塗っていった。びくびくっと尻が震え、秘部から愛液がじゅわっと溢れる様子は、何度見ても視聴者たちを飽きさせない魅力があった。

 7時55分。お尻の穴の皺が17本であることを、マジックを塗られて公表された麻衣子は、ようやく四つん這いポーズを解かれた。
《8時になっちゃうと全国の朝ドラファンが怒っちゃうからね。あと、天気予報はしっかりお伝えしなくちゃね》
 青い文字がネットモニターに表示されると、<え、もう終わり?><朝ドラよりこっちがいいなあ><久しぶりにおっぱいが見たいな><いつもの爽やかな笑顔で締めの挨拶してねー>……と、際限なくコメントが表示された。

 その後の5分間は、ある意味で麻衣子にとって今まで以上の羞恥地獄だった。
 次のコーナーはお天気コーナーで、さっき自分のお尻の穴の皺にマジックを塗っていた彩香と一緒に画面に映らなければならなかった。もちろん着衣は許されず、一糸まとわぬ姿ままだ。

 立ち上がってテレビカメラに向き合うと、麻衣子はスタジオにいる人数の多さに驚愕することにもなった。最初は番組スタッフ20人ほどだったのに、今では百人以上が目の前に立ち、全裸で生放送を強要される美人女子アナに心配と好奇の混じった視線を向けていた。
 さらには、総務部長、広報部長たち経営幹部まで……いや、会長の十川までもが深刻そうな顔で自分を見ていた。あれだけ厳しく言ったのに、こんな醜態を晒したことに怒っているに違いない……
「えー、この週末は珍しく、全国が晴天なんですね」
 麻衣子は平静を装い、いつもどおりの明るい声で言ったが、それがかえってギャラリーの目を愉しませていた。

《それじゃあおさらいしようかな。これはどこでしょう》
 「声」はそう言うと、意地悪な遊びを始めた。それは、麻衣子の性感帯のいずれかを刺激して、その反応でどこを弄られたかを視聴者に答えさせ、直後に「指」のカーソルを表示する、というものだった。その結果、麻衣子は乳首を弾かれ、耳を舐められ、尻穴に指を入れられ、クリトリスをつままれ、秘裂を撫であげられ、その度に顔を歪め、身体を震わせ、声が上ずる姿を晒してしまい、視聴者たちに笑われることとなった。それはほんの2分のことだったが、麻衣子には永遠にも感じられた。
《麻衣子ちゃん、骨盤のとこの窪みとお尻のへこみのとこもすごく感じるって、全国の皆様に分かってもらえてよかったね》
 「声」がそう言ったとき、ようやくお天気コーナーが終わった。

 7時59分。異例の30分延長となった「おはようニュース」もいよいよ終わろうとしていた。番組の最後の挨拶は、栗山、麻衣子、奈央、瑤子、彩香の5人が並んで、それでは皆さま、よい週末をお過ごしください、と言うのが恒例となっていた。

 自分が晒してしまった究極の羞恥の数々、「声」による快感責め、脳内にひっきりなしに聞こえる視聴者達の卑猥なからかい声……もはや、麻衣子は立っているのがやっとだった。早く、早く終わって……もう、なんでもいいから……

《それじゃあ最後にこう言って終わるんだよ。他の4人は黙ってていいから》
 麻衣子がもはや、拒否する気力もないのを見透かすように、「声」からの指示が表示された。

 ネットモニター画面に表示された文字を見て、麻衣子以外の4人は息を呑んだ。しかし、麻衣子はその文字を微笑みとともに読み上げた。
「……視聴者の皆様、本日は、生放送中に10回もイってしまい、大変失礼しました。ペナルティとして、私、本澤麻衣子は、今後、視聴者の皆様のご命令があれば、いつでもどこでも、身体の全てをお見せすることを、誓います……」
 麻衣子はそう言うと、白い歯を覗かせてにこりと笑った。全裸の身体は相変わらずはっきりと映り、うっすらと汗が浮かんだ全身の肌がぬめり光っていた。それはある意味、この上なく美しい姿だった。
「それでは皆さま、良い週末をお過ごしください」
 麻衣子がそう言って上品に頭を下げると、他の4人も慌てて頭を下げた。

 次の瞬間、画面が切り替わり、朝の連続ドラマの放送が始まった。

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「放送終了しました!」
 静まり返ったスタジオにスタッフの声が響いた。皆の視線がさりげなく麻衣子に集中した。美しい身体の全てを晒し、笑顔で立っている美女に……

 次の瞬間、麻衣子の膝が崩れ落ち、床に座り込んだ。両腕で胸を庇い、真っ赤な顔でうつむいているのが、皆の同情を誘った。しかし、特に男性達は、その美しい肌や羞恥にまみれた顔を盗み見ることをやめられなかった。

 パチ、パチ、パチ……突然、大きな拍手が響いた。
「いや、お疲れさん!」
 それは、会長の十川だった。
「よく耐えてくれたな、本澤くん!」
 十川が太い声でそう言って拍手を続けると、慌てて他の皆も続き、スタジオは大きな拍手と、お疲れ様、とねぎらう声に包まれた。

 麻衣子はすぐにタオルをかけられ、瑶子達に抱えられながら控え室に移動した。用意してあった服を身に付けると、黒いバンに乗せられ、こっそりとN放送を脱出した。
 朦朧としていた麻衣子は全てなされるがままだった。車の黒い窓越しにいつもの渋谷の街の風景が見えたが、それは今までと全く異なるものに見えていた。
 大丈夫だ、心配しないで今日はゆっくり休め、電話は出るな、ネットも見るな、明日になったら、これに連絡するから……有川がそう言って渡してくれた携帯端末だけが、今の麻衣子の希望だった。

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 その日はN放送にとってかつてなく激しい批判に晒される日となった。
 コールセンターへの入電は数千件にも上り、そのほとんどが、「おはようニュース」での事件がなぜ発生したかの説明を求めるものであり、脅迫に屈して本澤アナに痴態を晒させ、モザイクすらなく放映してしまったことへの批判だった。
 全く情報を与えられていないオペレーターは、現在事実確認中である旨、今後説明させていただきます、と繰り返すしかなかった。

 ただ、他局や主要なネットメディアでは、この件に触れられることはほとんどなかった。N放送からの要請及び監督官庁からの指導があったことが大きな要因だったが、各メディアでも女子アナがいるため、大事にはしたくなかったのだ。
 さらに、主なSNSにも行政からの指導があり、今日の麻衣子に関連する投稿はただちに削除されるようになっていた。いつもは行政の干渉に批判的な大手匿名掲示板のネットユーザー達も、今日のことに関しては麻衣子に同情の空気が支配的であり、行政による規制は概ねすんなりと受け入れられていた。

 しかしながら、人々が噂話をすることは止められなかった。土曜日に授業のある学校では、すぐに男子の間で今朝のおはようニュースの動画が拡散した。ネットにおいては、海外のアングラサイトに動画が掲載されてしまい、削除要請が追いつかない状況になった。

 結局、その日のうちに、公共放送の美人女子アナウンサーが何らかの理由により全裸で生放送させられ、秘部やお尻の穴まで自ら開いて見せ、さらには10回も絶頂に達する姿を晒したことは、日本中に知れ渡ることになった。麻衣子の美しい裸身――抜けるように白い肌、優美な膨らみの乳房、淡いピンクの乳首、無毛の股間、鮮やかなサーモンピンクの襞、小さめのクリトリス、窄まったお尻の穴の皺の数が17本であること、感じた時の喘ぎ声や悶え方、秘部の濡れ方、絶頂の時の表情と声――女性として絶対に見られたくない部分、知られたくないことが、日本中のほぼ全員の成人男性に知られ、携帯端末やパソコンにしっかりと保存されてしまった。

 N放送では、局始まって以来の不祥事の対応に向けた緊急幹部会議が開かれていた。事実の確認と今後の適切な対応策の検討――言葉で言うのは簡単だが、議論は混迷を極めた。そもそも「脅迫」とは何なのか、なぜ、脅迫に屈して一人の女子アナウンサーを全裸で放送させてしまったのか、せめてモザイクはかけられなかったのか、警察には訴えるのか、監督官庁への報告をどうするか、視聴者にはどう説明するのか、記者会見は行うのか、責任を追及されたらどうするのか――会長の十川は全ての予定をキャンセルし、対応策の検討に集中した。
 夜まで続いた議論は、大筋の方向性まで合意したところで、後は十川会長、総務部長、広報部長、編成部長等数名だけの幹部の決定に従うこととなった。

 一方の麻衣子は、有川の指示に従って、携帯端末の電源を切り、テレビやウェブサイトを見ることもせず、一切の情報を遮断していた。ぼーっとした頭のままで風呂に入り、味も分からずありもので食事をした後は、ひたすらベッドに入って目をつぶり、現実から逃れようとしていた。
(絶対に大丈夫、って、信じていいんですよね、有川さん……)

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 翌日の日曜日。N放送は緊急記者会見を行い、驚くべき発表を行った。
 その主旨は、昨日の「おはようニュース」の映像は、何者かに乗っ取られたものであり、途中からは全部加工映像だった、というものだった。広報部長が短い説明を終えると、記者たちは一瞬、ぽかんとした表情をした。その後すぐに、皆が一斉に手を挙げ、口々に質問を発した。

 記者たちが呆れるのも無理はなかった。あれだけリアルなセット、人物のリアルさ、ニュースが当日のものであること……事前に加工映像を作成できるはずがなかった。それに、1時間以上に渡って放送ジャックをできる筈がないではないか。事実の隠蔽、責任逃れではないのか……

 しかし広報部長は悪びれることなく、同じ説明を繰り返した。詳細は不明であり現在調査中である。ある事情により脅迫に従わざるを得なかったが、それは現時点では明かすことはできない。警察に依頼し、犯人逮捕に協力しているところである。本澤アナは着衣のまま放送しており、服装の乱れは一切なかった。ただ本人は今回の事件に非常にショックを受けており、静養中である。どうか、静かに見守っていただけないか――悲愴な面持ちで頭を下げる広報部長に対して、記者たちの追及はいつもの鋭さを欠いたまま、記者会見は終了した。

 日本中で大論争が起こり、賛否両論が入り乱れた。 N放送の見解に賛成する意見のポイントは、生放送で女子アナウンサーが裸になるなどあり得ないこと、が一番大きかった。現在の技術なら、仮想映像を作成することも理論的には不可能ではないし、当日のニュースに被せる形で加工することもできる……少し苦しいが、そう思ってあげたいという気持ちがある者には一定の説得力があった。
 一方否定派の意見は、加工にも限度があり、昨日の放送を加工映像で説明するには無理がある、という点が主だった。また、一輪車でイってしまった(と噂の)時と、感じ方がそっくりだという根拠もあったが、それを利用して今回の加工映像を作成したのだろう、という反論にあっていた。
 検証のためとして、実際に同じような加工映像を作成しようと試みた者も多数出現した。しかし、昨日の放送と同レベルの物を作ることができる者はいなかった。やはり、N放送の説明には無理があるのではないか、麻衣子ちゃんのため、なかったことにしたいための嘘ではないか……ネットでは、そんな雰囲気が支配的になっていた。

 麻衣子もこの緊急記者会見を自宅で見ていた。有川に渡された携帯端末に連絡があり、見るように指示されたのだ。内容を全く知らされていなかった麻衣子は、あの放送が加工映像であり、麻衣子は着衣だった、という説明に驚愕した。そんなことが受け入れられるとはとても思えなかった。きっとこの発表を受けて、ネットでは論争が巻き起こっているに違いない。私の、死んでも見られたくない部分を詳細に検証しながら……

 全然、大丈夫じゃない……麻衣子は有川に不信感を抱き、以降は携帯端末への連絡を無視してベッドに寝て、その日を過ごした。


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