part 6

 あれから2日。フォーシーズンテニスサークルは合宿の3日目を迎えていた。サークル全員に全裸を見られてしまった菜穂子だが、不思議とそのことを話題にする者はいなかった。

 むしろ、皆が以前にもまして菜穂子をちやほやしているような雰囲気だった。加奈子や真理、恭子たちも、高井先輩、とにこにこ笑いながら親しげに話しかけてくる。菜穂子はみんなが自分を思いやってくれているように感じた。

(きっと、この前はやり過ぎたと思って反省しているんだわ。私もあのことはここだけのこととして忘れよう・・)
死ぬほどの羞恥を味わわされた菜穂子だが、少しほっとしていた。

 しかし、菜穂子は知らなかった。1日目、2日目の夜に、男子、女子がそれぞれ集合し、最後の夜に向けて周到な準備をしていたことを・・・。


 そして、その夜。貸別荘の大広間に全員が集合し、合宿最後の飲み会を行っていた。菜穂子も話しかけてくるみんな囲まれてに楽しく過ごしていた。菜穂子の服装は、上はピンクと白のストライプのシャツ、下は青いジーンズという気楽ないでたちであったが、清楚な菜穂子が着ると、ほのかな色気が感じられた。

 1時間ほど経過した頃。俊之からさりげなく目配せを受けた加奈子が口を開いた。
「それじゃあ、そろそろ高井先輩に、男子の心をつかむ方法についてレクチャーしてもらいましょうよ。1年の女子はみんな高井先輩を羨ましく思っているんですよ。どうしたらそんなに男子にもてるようになるんですかぁ?」

 菜穂子の顔がさっとこわばった。あのときのことを言っているのだ。
(嘘! また私を貶めるつもりなの・・・。)
そっと加奈子達の表情を窺ったが、加奈子も真理も屈託の無い表情で笑っていた。菜穂子は取り越し苦労であったと感じ、内心でほっとしていた。

 「じゃあ、何から聞きましょうか?」
いたずらっぽく恭子が言った。
「花岡先輩、男子はまず女子のどういうところを見るんですかぁ?」

いきなり振られた浩一は、照れ笑いを浮かべながらも答える。
「そうだなぁ。やっぱりまず顔だけど、次はスタイルかなぁ。その点、菜穂子ちゃんなんか抜群だよな。」

 男子たちがニヤニヤしながら頷く。おとといコートで全てを見ているのだから、菜穂子のスタイルはよく覚えているのだ。そして、それを聞いた菜穂子はまた、男子の視線を感じて耳まで真っ赤になった。一方女子たちは、男子達の眼が期待に輝くのを見て、強烈な嫉妬を感じていた。

 「じゃあ、正確なサイズを測らせてもらいましょうよ。」
真理が提案する。加奈子と恭子はその意図を悟ってニヤリと笑う。

 「菜穂子先輩、早くその服、脱いで下さいよ。」
急に命令口調になった真理と、その言葉に菜穂子が驚く。

「え、どうして・・・?」

「だからぁ、正確に、サイズを測るためですよぉ。やだなぁ、コートでの貸しを忘れたんですかぁ? ちょっと服を脱ぐだけじゃないですか。もっと恥ずかしい格好にしたっていいんですよ。」

「何ぶりっこしてんのよ、菜穂子。さんざんコートで見せびらかしたくせにぃ。」
実樹の信じられない言葉に菜穂子は耳を疑った。もはや実樹は菜穂子に屈辱を与えることに何の躊躇も見せない。

「あーじれったいなあ。早くしねーんなら、大股開きにして縛り上げるぞ。」
直人の言葉だ。合宿前まで恋人気取りだったことが信じられない。

 菜穂子は再び屈辱的なストリップを衆人環視の中で行わなければならなくなった。頬を朱に染め、恥じらいながらシャツを脱ぐと、上半身はピンクのブラジャーだけとなる。思わず両手で胸を庇った菜穂子だったが、直人に厳しい声で隠さないように叱られ、仕方なく両腕を下ろした。

「今度はピンクかぁ。いいねぇ。」
「ほんとに先輩って、か〜わいい!」
あれほど菜穂子に憧れていた1年女子も、すっかり菜穂子を蔑んでいた。菜穂子は屈辱に耐えながら、今度はジーンズを下ろしていく。コートでの時とはまた違い、下半身が、パンティ、ちょうど良い肉付きの太もも、柔らかそうな白いふくらはぎ、と徐々に露出していく様子はは、格別に官能的だった。あっという間に菜穂子はピンクのブラとパンティだけの下着姿になる。

 「お願い、真理ちゃん、これで許して。他のことなら何でもするから。」
後輩の真理に哀願するなど、本来は菜穂子のプライドが許さないのだが、そんなことを気にしていられる状況ではなかった。この場では、真理が菜穂子の生殺与奪を握っているのだ。

 真理はそんな菜穂子を見下すように見ながら、
「分かったわ、菜穂子先輩。許してあげるから、その代わりに、これは我慢して下さいよ。村野先輩、あれをお願いします。」
と4年生で、カメラとパソコンに詳しいことで有名な村野義雄に軽く会釈する。

 村野はサークルのホームページ担当をしており、特にデジタルカメラで撮った菜穂子の写真が見られるコーナーは、画質が良く、更新頻度も早かったため、学内外で大人気であった。K大の男子学生でこのページにアクセスしたことが無い者はいないと言っても過言ではない。

 うなずいた村野は、ノートパソコンを用意し、また、大画面テレビにデジタルカメラを接続した。
 そして村野はテレビのスイッチを入れた。

 最初は健康的なテニスウェア姿の菜穂子の写真だった。しかし、中身は徐々に過激になっていった。アンダースコートを脱がされ、ショットの瞬間に白いパンティが露出しているシーン、ブラとスコートだけで立ちつくす菜穂子の姿、そのスコートがまくれて露出した瞬間の尻のアップ、倒れ込んで秘部も露わに横たわる菜穂子の全身写真、そして、一糸まとわぬ姿でテニスをしている菜穂子の恥辱の姿・・・と菜穂子が必死に忘れようとしていたシーンが映し出されていく。

「あぁっ! いやよ、こんなの、いやあ!」
画面を見て菜穂子は絶句した。

 テニスコートでの菜穂子の姿が大映しとなっているのだ。村野はスライドショー機能を用いて画像を次々に切り替えていく。映されているのは、初日の模範試合で少しずつ剥かれていく菜穂子であった。


「ひどい、写真なんて・・・返してください。」
下着姿の菜穂子が叫ぶ。しかし、みんなは大喜びだ。

「さっすが村野。高い金出してデジカメ買ってやった甲斐があったよ。」
俊之がほめる。

「きゃー、これが菜穂子先輩の青春の思い出の写真よっ、私たちにも下さぁい。」
加奈子と真理も大はしゃぎだ。

「あったり前だろ。このためにみんな高い合宿参加費払わされたんだぞ、サークル全員にメールで送ってくれよな。」

「菜穂子、良かったわねー。こんなきれいに撮ってもらって。確かにこれをクラスのみんなに送ったら男子の心をがっちり掴めるわね」
実樹が恐ろしいことを言う。

「しっかし、村野うめぇなー。こんなに可愛い素人のコのエロテニス、いくらインターネット探しても、絶対ねぇぞ。しかもあの菜穂子の写真だぜ、K大の男なら幾ら出しても惜しくないんじゃねぇか?」

 こんな写真がばらまかれたら・・・菜穂子は最悪の事態に頭がくらくらした。

次章へ 目次へ 前章へ

アクセスカウンター