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PART 35(abaab)
そしてその日の夜。梨沙の携帯にゆきなからのメールが届いた。
『梨沙ちゃん、今日は大変だったね。だけど、あの後みんなで話して、梨沙ちゃんのお金、すぐ返すことができそうになったよ。明日の朝6時に教室に来てね。』
今日の恥ずかしい事件の関係者からのメールはそれだけであり、他には電話も来なかった。男子の柏原くん達はひょっとしてメールしづらいのかもしれないけど、芳佳ちゃんは・・・アヤメ企画で買ったバイブをこっそり渡したあと、芳佳が放課後どうしたのか、自分は生徒総会があったために分からなかった。梨沙からメールを送ったが、ありがとう、大丈夫だったよ、という簡単な返信が来ただけだった。
しかし、ゆきなのメールからすると、クラスの女子達に何らかの事情を話して、カンパを募り、12万円を集めてくれたのだろう。ーーーまさか、中絶費用だなんて思われていることはないだろうけどーー
そして、それでアヤメ企画にお金を返してしまえば、とりあえず、金銭的な面での立場は回復できる。あとのことは、それから考えよう。
・・・もちろん、現実がそんなに甘いとは梨沙も思ってはいなかったが、今まで想像もできなかったような恥ずかしい体験の連続に、それだけ考えるのが精一杯だった。
(とにかく、明日を普通に過ごして、学校のみんなには、あれが自分ではなかったと思ってもらわなくちゃ。アヤメ企画だって、そんなに無理をする会社じゃない筈・・・)
布団の中で梨沙はそう自分に言い聞かせて、目をつぶった。
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次の日の朝、梨沙は朝5時に起きると、そっと家を抜け出して学校に向かった。早朝の町は人もまばらで、電車も空いていた。
(大丈夫、きっと何とかなるわ。)
朝の新鮮な空気に触れ、梨沙は少しだけ気分が晴れるのを感じた。しかし、命令通りにパンティは履かず、スカートの中はWバイブ付きの前貼りだけの姿では心許なく、また、歩く度に体の中から性感帯を刺激される感覚に、梨沙は時々小さく震えていた。
5時50分に学校に着くと、やはり人影は全く無かった。そして梨沙は、いつもどおり下駄箱を開けると、その中に何か入っているのを見て固まった。そこには、膨らんだ封筒が入っていた。
「え、何、これ・・・」
梨沙は思わず小さな声でつぶやきながら、その封筒を開けた。するとそこには、1枚の手紙と1枚の写真、そして超小型インカムが入っていた。
そして手紙には、
『梨沙ちゃん、おはよう。このインカムを付けて、指示に従うこと。』
と書いてあった。そしてその写真には、正門前で全裸前貼り姿で悶える梨沙の姿が映っていた。
「い、いやっ! 誰かいるのっ!?」
梨沙は周囲を見回したが、人の気配はなかった。
(ア、アヤメ企画ね・・・一体どうするつもり・・・?)
逆らう術の無い梨沙は、震えながらその写真を細かく破り、超小型インカムを耳に入れた。
しかし、インカムからは何も聞こえず、梨沙は不安に思いながらも、そのまま教室に向かった。階段を登る時にWバイブが梨沙の身体を鋭く抉り、梨沙は吐息を漏らしながら何とか歩き続けた。
(だ、大丈夫よ。だって、ゆきなちゃん達が集めてくれた女子が来てくれているはず。申し訳ないけど、とりあえずお金を借りて、悔しいけどアヤメ企画に払えば、それで終わり、なんだから・・・)
梨沙は教室に着くと、小さく息を吸い込み、ゆっくと扉を開けた。
「お、おはよう・・・え?」
梨沙は目の前の光景に思わず足が止まった。教室の中には、女子ではなく、男子生徒の全員が座っていたのだ。
「・・・え、ど、どういうこと?」
すると、副クラス委員の内藤が皆を代表するように言った。
「ゆきなちゃんに言われたんだけど、アダルトショップにお金をふっかけられて、脅迫されているんだろ? 大丈夫だよ、何があっても俺達が梨沙ちゃんを守ってあげるからさ、絶対!」
その顔は義憤にかられて若干紅潮していた。
内藤の言葉を皮切りに、他の男子達も続いて梨沙に声をかけた。
「俺達みんなで、金なら何とかするよ。」
「何があっても梨沙ちゃんの味方だよ、俺達。」
「この前は、梨沙ちゃんの写真でからかったりして、ほんとごめん。でも、皆、梨沙ちゃんのこと、応援したいと思ってるんだぜ。」
「ゆきなちゃん、具体的には教えてくれなかったけど、何か、いろいろ汚い手を使ってるらしいじゃないか、そのショップ。俺達で潰してやるよ。」
男子達は皆、可愛い女子を守るヒーローのような気分になり、自分の言葉に酔っているようにも見えた。
しかしそれは、梨沙にとって意外な喜びだった。
「あ、ありがとう、みんな・・・本当に嬉しいわ。」
梨沙は少し明るい表情になって、男子の皆を見回した。
「・・・だけど、ゆきなちゃんにはどんな風に聞いているの?」
(まさか、変なことまで言ってないよね、ゆきなちゃん・・・)万一のことを考え、梨沙の脚が小さく震えた。
「うん、あんまり詳しくは聞いていないんだけど・・・何か、弱みを握られて、お金を要求されているんだろう、梨沙ちゃん?」
内藤が言いにくそうに言った。
「・・・だけど、俺達、お金くらい用意するからさ!・・・いくらでも言って、梨沙ちゃん!」
「・・・あ、ありがとう、みんな・・・」
(・・・た、助かった。)梨沙は意外な急展開にほっとした。
「実はね、・・・・」
そこまで言いかけたとき、梨沙の動きが急に止まった。突然、インカムから男の声が聞こえて来たのだ。
『梨沙ちゃん、おはよう、黒川です。昨日はいろいろ楽しませてもらったよ・・・だけど、分かってるよね、自分の立場・・・聞こえるなら、右手で耳たぶを触ってみな。』
それは確かに、黒川の声だった。
(い、いやあっ!)
二度と聞きたくない男の声に、梨沙はおぞましさを感じ、背筋が寒くなった。
(み、見てるの、・・・どこで!?)
梨沙は仕方なく、右手をさりげなく上げ、耳たぶを触った。
『よし、それでいい。ちゃんと指示どおり、インカムを付けてるんだな、感心、感心(笑)』
黒川はインカムの向こうで小さく笑った。
『それじゃあ、これからも俺の指示に従うんだ、絶対だぞ。もし少しでも怪しい動きをしたら、お前のオナニー動画、インターネットにアップして、お前の携帯のアドレスにあった全員にメールで送るからな? あ、それとも、シックスナインでフェラしてる動画の方がいいか?(笑)
そこにいる正義感の強いお友達も、お前がバイブ入れてよがってるところとか、男のチンチン咥えてるとこ見たら、じっくり見ちゃうだろうな。』
(い、いやあっっ!! そ、そんなの、絶対・・・)
梨沙は最悪の事態を想像して小さく顔を歪めた。皆に知られたら、インターネットに公開されたら、私・・・しかし、黒川は梨沙に話すことはできても、梨沙から黒川に意志を伝える手段は無かった。
「どうしたの、梨沙ちゃん、急に黙っちゃって。」
「そうだよ、それに、何か辛そうだけど、体調が悪いの?」
「病院に連れていこうか? タクシー呼んでもいいよ。」
顔を歪めて小さく震える梨沙を見て、男子達が声をかけた。いつも明るく元気な梨沙とは余りに違った表情だった。
『それじゃあ指示を始めるぞ。・・・まず、インカムを付けていること、誰かに指示されていることを、絶対に悟られるな。分かったらすぐに、いつもの笑顔を見せるんだ。それで、何でもないよって言え。』
「・・・あ、ごめん、ちょっと朝が早くてまだ寝ぼけてるみたい!」
梨沙は努めて明るい声でそう言うと、にっこり笑った。
「全然大丈夫、何でもないよ。」
梨沙の明るい笑顔に、男子達は皆、一瞬にして心を奪われた。こんなに可愛くて優しくて真面目な女の子に笑いかけられて、惚れない男がいるとは思えなかった。
しばらくの沈黙の後、内藤が言いにくそうに言った。
「うん、それならいいんだ。ただ、梨沙ちゃん、アヤメ企画っていうところで働かされてるんだろ?・・・ごめん、ゆきなちゃんが言いづらそうにしてたのを、無理やり聞き出したんだ。」
また表情が強張った梨沙をちらりと見て、内藤は自分の言葉が事実と確信した。
「アヤメ企画って・・・そういう店、なんだろ?・・・俺達、絶対に梨沙ちゃんにこれ以上辛い目にあわせたくないんだ。」
その時、絶妙のタイミングでインカムから声が聞こえた。
『アヤメ企画でのバイトは、自分の意志でやってると説明して納得させるんだ。少しでも疑われたらどうなるか、分かってるな?』
教室の中をさりげなく見ていた梨沙は、その時、教室のあちこちの壁に、例の貼付け式カメラが巧妙に付けられてるのを発見した。(い、いつの間に・・・私の動きを全て監視しているのね・・・ひ、ひどい、そんな命令)
「・・・わ、私が自分の意思で店員になったの。お金を稼ぎたいし、実は、エッチなことが好きなの・・・」
梨沙は必死に笑顔を作り、自分でも無理だと思うセリフを口にするしかなかった。
(お願い、みんな、信じて・・・私のことを心配してくれるなら・・・)
しかし、梨沙の内心の声がクラスメイトに届くはずも無かった。そしてクラスメイトの男子達は、梨沙の表情がやや硬いことや、その声が少し震えていることを見逃さなかった。
「嘘だ。絶対に、言わされてるだろ、梨沙ちゃん。」
「大丈夫、俺達が絶対に守るから。」
「ここには俺達しかいないんだから、勇気を出して本当のことを教えてくれよ、梨沙ちゃん!」
「警察に行くなら一緒に証言するよ。梨沙ちゃんは絶対に自分からエッチなことするコじゃじゃないって。」
「この前はパンチラ写真を回覧したりして、本当にごめん。だけど、みんな、梨沙ちゃんが好きなんだ。信じてくれよ。」
男子達はその心からの応援が、梨沙を更に窮地に追い込んでいることには、もちろん気づくはずがなかった。
(い、いや、信じてもらえないと、私・・・い、いやあっ)
梨沙は内心の怯えを必死に隠し、にこりと笑った。
『おいおい、何やってるんだよ。もう少しでゲームオーバーだぞ、梨沙ちゃん。そんなに、自分のアソコの中をみんなにばら撒いて欲しいのか?』
インカムの黒川が呆れたように言った。
『仕方ねえなあ。お前の携帯に写真を一枚送ったから、こう言うんだ・・・ほら、もっと自然に笑わなくちゃ』
梨沙は笑顔のまま、さりげなく携帯を取り出し、受信しているメールを確認した。そこには、下着姿でアダルトショップの看板を持って渋谷の街に立っている写真が映っていた。
(い、いやっ、そんなのひどい!・・・そんなこと、言えないっ!)
しかし今の梨沙に、抵抗する術はなかった。梨沙は必死の表情で自分を見つめる男子達の顔を眼にしながら、絶望的な気持ちになった。そして、命令されたセリフを仕方なく口にした。
「あ、ありがとう、みんな。でも、本当に私は好きでしてるのよ。・・・ほら、写真を転送するから、見てみて。」
梨沙はそう言うと、ブラとパンティだけの姿で路上に立っている自分の写真を、クラスの男子全員のメーリングリストに送った。その写真を見れば、可愛い下着に包まれた梨沙の乳房や尻の形がまる分かりだった。そして梨沙が持っている看板には、どぎつい色で、『私の下着、買ってください』とか、『うんと感じちゃうバイブあります』などと書いてあるのだ。
すぐに男子達の携帯がメール受信を告げ、それぞれが自分の携帯画面を覗き、驚愕の表情でその写真に釘付けになっているのが見えた。
(い、いや、お、お願い、そんなに見ないで・・・私のこと、軽蔑しないで・・・)
梨沙は必死に祈ったが、さらに命じられたセリフを口にするしかなかった。
「ほらね、私、嬉しそうでしょ? 買ってくれるお客さんがいたら、店に戻らないで、その場で下着を売ることもあるのよ・・・」
それは、制服姿の女子高生の言葉とは思えなかったが、信じてもらえなければ、それよりも遥かに恥ずかしい写真と動画をばら撒かれてしまうのだ。梨沙は羞恥を必死に堪えて、男子達に笑顔を向けていた。