PART 11

 「よし、それでいいでしょう!」
力強くママに承諾の返事をしたのは、洋子でも真奈美でも無かった。課長の谷村だった。いつもは自分一人で物事を決めることが出来ず、馬鹿にされている谷村の言葉に、洋子達は驚いた。

 「課長、いいんですか? あんまり派手にやるのはまずいんじゃないですか?」
思わず、洋子が異議を唱える。もちろんそれは、下着姿を晒して羞恥に喘いでいる理絵を思いやっての事では無く、谷村の軽はずみな決断で、自分にとばっちりが来ては困るからだ。

 しかし、谷村はいつに無く強行だった。
「大丈夫だ。俺の責任で、許可する。見知らぬオヤジ達にまで体をいじられる姿を同僚に見られれば、加藤君も職場に居づらくなるんじゃないか? だけどママ、下着を脱がすのは無しだよ。そこまでやっちゃあさすがにまずい。」
まともな事を言っているようだが、その顔はほとんど酔っぱらいに近かった。その決断力の背景には、酔いによって、日頃の欲望が顕在化していることもあるのだろう。あの、エリートの加藤理絵を、今は自分の思いのままにできる・・・もっと恥ずかしい目に遭わせてやる。

 そのチャンスをママが見逃すはずもなかった。
「ありがとう、課長さん。じゃ、ちょっとだけ、理絵ちゃん、借りるわね。ちょっと、エミちゃん、こちらにスモークサーモンと、アワビとトロ、持ってきて頂戴!」
あっという間に足場を固めていった。

 洋子たちもさじを投げた、といった表情だ。何かあったら、今の言葉通り、課長に責任を取ってもらいましょう・・・洋子と真奈美は視線を合わせて頷きあった。

 ママがここまで必死になったのは訳が合った。実は、この前の理絵のブラ丸出し事件以来、ママに対して、男達からの問い合わせが殺到したのだ。誰なんだ、あの美女は? どうしてあんなことをされていたんだ? もっと恥ずかしい思いをさせてやってくれ、金は出すから・・・等々。

 そこへ洋子からの「理絵羞恥責め計画」の申し出があったので、利に敏いママはすぐに動いた。早速、プラタナスにとっての上客−金払いが良く、口の堅い職業の人間−に声をかけた。とびっきりの美人キャリアウーマンの面白いショーが見られるんだけど。素人の娘を無理矢理罠に嵌めるの、面白そうでしょ。・・・そんな文言を使って、メンバー限定の特別ショーを開催することにしていたのだ。

 しかも、特別ショー代として、一人一万円を徴収することになっていた。ヌードはちょっと無理だけど、たっぷりサービスはさせるから・・・ママは、洋子達に断りも無く、そんな約束を勝手に連発していた。もちろん、洋子達に気付かれずに、「理絵羞恥責め計画」と「美人キャリアウーマン屈辱のストリップショー」を同時に成功させる自信がママにはあった。

 「もういいわよ、理絵ちゃん、お疲れさま。で、悪いけど、今度はちょっとこっちに来てね。」
そういってママは、理絵の手を引っ張った。

 「え、何するんですか! 服を返して下さい!」
事情の分からない理絵は困惑した。(これで終わりの筈なのに、なぜ?) とにかく早く、服を来たかった。

 「課長さんから許可をもらったの。ちょっと、皆さんのテーブルに挨拶をしてね。5分ずつでいいから。ちょっとお話をして、お酌をすればいいの。」
ママはそう言いながら、おっとりした外見から想像するよりも遥かに強い力で理絵を引っ張っていった。状況が良く理解できない理絵は反抗して良いかも分からず、中途半端にしか抵抗しなかったため、どんどん引きづられていった。

 「それでは、皆さん、5分ずつですよ。よろしくお願いしますね。」
最初のテーブルに理絵を付かせると、ママはにこやかに挨拶をした。
「あ、みなさん、涎が出てますよ。だけど、脱がしちゃ駄目ですからね。この娘、本当に素人さんなんだから。」
内心を見透かされた男達は、笑って誤魔化した。しかし、ママの言葉に逆らえば恐い男達の世話になることもうすうす感じていた。

 「あ、あの、よろしくお願いします。・・・どうぞ」
仕方なく、理絵はお酌を始めた。スーツの男達4人と店の女の子1人に囲まれ、ブラとパンティしか身に付けていない理絵は身の縮む思いだった。皆、理絵の胸と股間に露骨な視線を向けていた。(・・・は、早く終わって。)お酌を続けながら、理絵は5分という時間があまりにも長い時間に感じられた。

 理絵が注いだ酒をあっと言う間に飲み終わった男達は、にやにやしながら理絵に話しかけた。
「いやぁ、理絵ちゃん、すっごい美人だねぇ。FJEの最年少係長って、本当?」
「英語もペラペラなんだってぇ。すごいねえ。」
「それにいい体してるよねぇ。スリーサイズ、教えてよ。」
そう言いながら太股に手が伸びる。

 その手の嫌らしい動きに、理絵は思わず声をあげた。
「ちょっと、何するんですか! その手を離して下さい!」
男の手をピシャリと叩いた。ママの話ではお酌をして話をすればいいだけ、だった筈だ。

 「おいおい、ちょっと、それが挨拶する態度かよぉ。」
「ちょっと可愛いからって気取り過ぎなんじゃないのぉ?」
「脚触られくらい、お酌するんなら当たり前だろ!」
理絵の襲われた小動物のような反応が、男達の制服欲に火を付けた。一斉に理絵の体に手が伸びる。

 後ろに回りこんでいた女の子に羽交い締めにされ、理絵の抵抗ができなくなる。男達の手が胸を掴み、股間を揉み、太股や首筋を撫でさすった。もうやりたい放題だ。

 「きゃ、きゃあ、やめてぇ! た、助けて、課長!」
理絵は大声をあげて助けを求めた。これはいくら何でもあんまりだ。下着姿に剥いた女を羽交い締めにして、触り放題なんて・・・さすがの課長も止めに入るだろうと理絵は祈った。

 しかし、谷村の反応は冷たかった。
「いつも男を馬鹿にしてるからそんな目に遭うんだよ! せいぜいサービスして、反省するんだな!」
谷村はもはや、完全に酔っぱらっているようだった。ママの指示で、アケミとエミが谷村にわざと濃い水割りを飲ませ捲っていたのだ。責任は全て谷村に押しつければいいとなれば、洋子と真奈美はもっと理絵をいじめようとするに違い無かった。

 男達にとっては、あっという間の5分が終わり、快感でぐったりした理絵は抱きかかえられるようにして隣のテーブルに移された。顔はまっ赤で、快感と羞恥に喘ぐようにハァハァいっている。理絵はテーブルをあと7つも回らなければならない。(ふふ、いい気味ね、理絵。せいぜい男達に可愛いがってもらうといいわ。)肩の荷が下りた洋子は楽しみながらその光景を眺めていた。片手にはしっかりとカメラを握っている。

 「あら〜、理絵ちゃん、大丈夫? あと7つだけだから、頑張ってね。」
言葉とは裏腹に、大して心配していないと言った表情でママが言った。そして、すかさず一番目のテーブルに戻って、交渉を始める。
「ねぇねぇ。堪能できました? お話次第ではもう一回呼んでもいいんですのよ。その時は、もうちょっとサービスさせますけど・・・」

 2番目の卓では、理絵に対する責めはさらにエスカレートしていた。お酌をしようとする理絵の手を取り、即座に女の子に固定させる。さらに、両側に座った男が理絵の片足ずつを持って、自分の太股に乗せた。結果、理絵は大股開きの格好を晒す事になる。

 「い、いやあ、こんな格好! 離して、離して下さい!」
取らされた姿勢のあられなさに理絵は首を振って叫んだ。ブラとパンティ丸出しの上、大股開きにされる−第五課の同僚の皆にも見られているに違いないと思うと、理絵は身も世もない羞恥に喘いだ。

 「助けを呼んでも無駄だよ。君の課長は君を見放したみたいだからね。」
その言葉を合図に男達の手が伸びる。

 今度の責めは、さっきよりもさらに露骨でいやらしかった。ブラ越しに理絵の乳首を摘んでは弾き、転がす。また、股間の筋にそって指を動かして秘裂をさすり、パンティの上からクリトリスを狙った。股間付近の性感帯を嘗め回す者もいる。

 「い、いやあ、だ、駄目ぇ! そんなの、駄目ぇ! 助けて。」
首を激しく振って必死に快感に耐える理絵の姿がまたこの上無くエロチックだった。理絵は処女ではない。今はニューヨークで留学中の佐伯祐介に、留学直前に処女を捧げたのだ。しかし、その一回しか経験の無い理絵の性感は開発されていないも同然だった。イク、ということもまだ良く分からなかった。そんな理絵の、24歳にしてはあまりに初な反応に男達は小躍りした。

 「あれ、理絵ちゃん、オナニーの経験、無いのかなぁ?」
「じゃあ、俺達が教えてあげるよ。」
「ほら、ここ、気持ちいいだろ?」
そう言った男がクリトリスをパンティ越しに摘んだ。

 「ひ、ひぃ、そこっ、駄目ぇ!」
目を白黒させながら理絵は叫んだ。電流の様な快感が全身を駆け抜ける。普通なら、その程度の知識は女友達からでも仕入れていそうなものだが、プライドの高い理絵は、どうしてもそのような話題に加われなかったのだ。理絵は意図せず、男達を誘うかの様に腰を、胸を、振りたてていた。

 「あらあら、理絵ちゃんって、本当にウブねぇ。かっわいい。」
五課グループの席から眺めていたアケミが、呆れたように言った。
「だけど、あんな風に男達のオモチャにされちゃって、かわいそうに。ありゃ、もう少ししかもたないわねぇ。みんなの見てる前でイッちゃうなんて、辛いでしょうねぇ。」
もちろん、その目にはひとかけらの同情も無かった。

 一方の大友達男性陣は、理絵のその姿を食い入るように見つめていた。あの、いつも毅然として理知的な瞳だった理絵が、あんなにスケベな表情をするものなのか・・・ あの理絵が、もうすぐイカされる瞬間を迎えようとしている・・・男達は一瞬もその痴態から眼を離すまいと理絵を凝視していた。

 しかし、理絵は、もはや自分を見つめる視線のことなど気にしていられなかった。少しでも気を抜くと、恐ろしいことになりそうだった。自分の意識がどっかに行ってしまう・・・イッた経験が無い理絵は漠然とした恐怖に、必死に唇を噛んだ。

 一方、理絵の意外な頑張りに、男達は焦った。
「お、おい、そんなに頑張るんじゃねぇよ。」
「ほら、ほら、これで感じるんだろ?」
「それそれ、イけ、イッちゃえよ、理絵。」
それぞれの手指の動きをさらにスピードアップさせる。

 しかし、理絵は踏ん張った。頭の中で必死に恋人の祐介のことを考えた。(祐介、助けて、お願い、祐介!)ひたすらそればかりを念じる。しかし、体を次々に快感の電流が駆け抜けて行く。(あ、ああ、・・・祐介、あたし、もう・・・)体の力が一気に抜けてきた。

 しかし、その時、ママの声が響いた。
「はーい、第2卓チーム、残念でした。時間ですよ。」
ママのどこか凄みのある声には逆らえず、男達は手を離した。
「あ〜あ、もう少しだったのによぉ」
各テーブルへの挨拶とお酌、は、理絵をイかせるゲームへと変質していた。

 「残念だったわねぇ。もう一回、チャレンジしたい? 相談に乗るわよ。」
ママがすかさず第2卓の男達に話しかける。
 


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