PART 35(bbbab)

 その後、梨沙と芳佳は、一つ隣の駅のファミレスで会った。そして梨沙が、遊園地であったことを、躊躇いながら、全て正直に話すと、芳佳は衝撃を受けてしばらく黙り込んだ。
「・・・そっか、ごめんね、梨沙ちゃん・・・ほんと、ごめん・・・」

 「・・・そんな、芳佳ちゃんが謝ることじゃないよ・・・」
あまりの芳佳の消沈ぶりに、梨沙は慌てて手を振った。
「悪いのは、黒川達なんだから・・・っていうか、アイリスって会社、なのかな・・・」
最大のアダルトビデオメーカー・・・罠に嵌まって遊園地で晒した、女の子として最悪の痴態がふと鮮明に蘇り、梨沙は小さく震えた。あんな動画や写真が公開されたら・・・私、本当にAV女優になってしまう・・・
「あはは、私、馬鹿だよね・・・思い上がって、世の中を変えるみたいなこと言っちゃって・・・」
梨沙は自嘲気味に言った。そして内心では、ほんの少しだけ、芳佳を恨んでいた。あの時、もう一度ショウブ堂に行こうとした時、芳佳ちゃんに止められていなければ、ひょっとしてうまくいったかもしれないのに・・・

 「・・・あのね、梨沙ちゃん、ちょっと知っておいてほしいことがあるんだけど・・・」
少しの沈黙の後、梨沙の思いを察したかのように、芳佳がおもむろに口を開いた。
「実は私も、あいつらにね、ちょっと恥ずかしい写真とか、撮られちゃっているんだ・・・」

 え、と驚く梨沙を見ながら、芳佳はできるだけ淡々と事実を話した。
・ある日の通学電車で痴漢に遭ったのだが、いつもよりもずっと悪質で、スカートを完全に捲られてしまった。
・周囲に助けを求めようとしたが、なぜか誰も反応しない。全員が痴漢の協力者だった。
・スカートを捲られただけでなく、たくさんの手が伸びてきて触られ、さらには写真まで撮られた。
・パンティを脱がされそうになった時、恥ずかしさを我慢して大声をあげ、周囲がひるんだ隙に逃げることができた。
・たぶんあれはアイリスで、私の恥ずかしい写真などを撮って、梨沙ちゃんを脅そうとしていたんだと思う。
・だから、梨沙ちゃんが二度目にショウブ堂に行くときは、電話をして止めた。もしかしたら、私のもっと恥ずかしい写真を合成していたかもしれないし。

 「・・・芳佳ちゃん、ごめん・・・私のために、芳佳ちゃんまで・・・」
梨沙は申し訳なく思うと共に、少しだけ安堵した。賢い芳佳は、そんな状況でも毅然と行動して、下着を撮られるだけですんでいたのだ。

 「いいの、そんなこと。それより、これからのことなんだけど・・・」
芳佳はそこで、少し声を潜めた。周囲をちらりと見回し、怪しい人間がいないか確かめた。
「こうなったら、ちょっと強引にでも、早く決着しなくちゃいけないと思うの。父に聞いたら、梨沙ちゃんのお陰で、ほぼ黒幕は分かったみたい。本当なら、もう少し時間をかけて、どんな小さな可能性でも潰してから交渉するところだって言ってたけど、すぐにしてもらうようにお願いするね。もちろん父には、遊園地のことはできるだけ言わないで説明するから。」

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 しかしその日、芳佳は父と話すことができなかった。いつもは遅く帰ってきても、芳佳が話したいと言えば必ず時間を取ってくれるのに、その日だけは酔いつぶれて帰ってきて、帰宅するなりすぐに寝てしまった。

 また翌朝も、芳佳が起きるより早く家を出てしまった。芳佳は仕方なく、今日こそは帰ってきたら大事な話を聞いて欲しい、とメールするのが精一杯だった。

 そしてその日の夜、芳佳はようやく父と話すことができた。芳佳は父に、真の敵がアイリスグループであること、梨沙はかなり恥ずかしい写真を撮られてしまったので、一刻も早く交渉して、父の力で事態を収束させてほしいこと、を切々と訴えた。それから、芳佳自身も電車の中で痴漢され、スカートを捲られて下着の写真を撮られてしまったことを付け加えた。

 芳佳の訴えをすっかり聞いてから、芳佳の父、須藤道雄はゆっくりと言った。
「話はよく分かったよ。それにしても、お前たち、大変な敵を相手にしたな・・・」
そして少し間を空け、頭の中を整理した後、道雄は言葉を続けた。
「まあ、アイリスなら知らない訳でもないから大丈夫だ。すぐになんとかするから心配するな。でも、しばらく痴漢や覗きには気を付けろよ。」
その表情の中に、ほんの少しだけ、苦渋の色が浮かんでいることに芳佳は気付かなかった。

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 芳佳が父と話しているのと同じ頃、渋谷の事務所の中では二人の女子高生を交えたミーティングが行われていた。

 「ふーん、やっぱり芳佳ちゃんが影で動いてたんだ。」
「芳佳ちゃんなら、お父さんの力を使えば、アイリスだってなんとかなるもんね。」
ゆきなとみどりが、会議室に備え付けられたモニター画面を眺めながら言った。
「だけど、ちょっと甘かったわねえ・・・」

 「しっかし、お前ら、本当に容赦ねえなあ。」
黒川が半分呆れた口調で言いながら、モニター画面を見た。
「まあ、いくら須藤さんでも、これじゃあどうしようもないようないよなあ。」
モニター画面には、一人の少女が制服を脱ぎ、水着に着替えるシーンが映し出されていた。前後左右から盗撮されているためにアングルが次々に変わり、可愛いお尻や白いお椀型の乳房が丸出しになって映っていた。そしてその少女の顔が映るとそれはセミロングのお嬢様風の美少女であることが分かった。それはもちろん、須藤芳佳だった。

 「ふふ、この動画を見た時の須藤さんの顔、本当に見物だったわよ。」
くすりと笑いながら妙齢の美女、葉川真樹が薄く微笑んだ。
「梨沙ちゃんのディルドオナニーとか潮吹きとか見ても、絶対許さないとか言って頑張ってたくせに、自分の娘のお尻が映っている動画見た途端に慌てふためいちゃって。それだけは許してくれ、だって。(笑)」

 「で、結局、芳佳ちゃんが頼りにしていたお父さんは、自分の娘のお尻とオッパイの公開をしないと約束する代わりに、お友達の梨沙ちゃんが、死ぬほど恥ずかしい罠にはまって破滅することに同意しちゃった訳だ。ま、親だったら当たり前か。」
黒川がそう言うと、ビールをぐいと飲んだ。
「・・・しっかし、この芳佳ちゃんってのも、なかなかいい身体してるな。顔も可愛いし。梨沙とセットで破滅させてやりてえな・・・あいつの会社のロビーでストリップさせて、受付でお父さんを呼ばせてやったら、あいつ、卒倒するかもな(笑)」

 「駄目ですよ、黒川さん、目がマジになってますよ。」
隣の木嶋が軽く肩を叩いた。
「須藤の奴はまだまだ使えるんだから、そういうのはあいつが裏切ったときに取っておきましょうよ。(笑)」

 「それにしてもあなた達、よくこんなの撮ってたわねえ、上出来よ。」
今一番人気のAV女優、佐伯ひかりがにこりと二人の少女に笑いかけた。
「それに、芳佳ちゃん本人じゃなくって、お父さんに見せるってのもいいアイデアだったわね。」

 「芳佳ちゃんの様子、ちょっとおかしいと思ってたんですよ、少し前から。」
ジュースのストローを咥えながらみどりが言った。
「だって、親友の癖に、最近は全然話をしてなかったし・・・あー、こりゃわざとそうしてるんだなって。」

 「そうそう。それに、芳佳ちゃんのお父さんならあちこちに力があるからね。だから、いざって時のために、ちょっと着替え姿を撮っておいた訳。あそこがうまく撮れなかったのは残念だったけど、まあ、やりすぎるとばれるからね。」
ゆきなが少し得意そうに鼻を膨らませた。
「お父さんに見せた方がいいと思ったのは、芳佳ちゃんにこれを見せても、自分が犠牲になってもいいって言いそうだと思ったから。」

 「あはは、これで二人とも、ブルセラショップに下着売ってるより、ずっと恥ずかしい秘密、握られちゃったな。おい、もう一回、梨沙のすっぽんぽん綱渡りオナニーショー、もう一回映してくれよ。最後の方で、梨沙が自分から腰振っちゃって、パイパンマ○コ擦り付けてよがってるところ。」
黒川がそう言うと、その場が笑いに包まれた。

 「・・・それで、これからだけど、どうしよっか。」
真樹がモニターに映し出された梨沙の全裸姿を眺めながら言った。
「この子だけは、悪いけど、徹底的に潰さないとね。遊園地でこんな目にあったのに、まだお友達のお父さん使って、私たちを潰そうとしてきたんだからね。もう少し対策が遅かったらやられるところだったわ。」

 「・・・確かにそうですね。だけど、梨沙にも芳佳にもばっちりマーク付けてましたから。隣駅で会えば大丈夫だろうなんて、まだまだ子供なんだよなあ。大人を舐めるなよ。・・・お、派手ないきっぷり!(笑)」
木嶋がモニターを眺めて笑った。
「あーあ、千人以上の男に見られながらよくやるよ・・・これ以上厳しいお仕置きって言ったら、どうするのがいいのかなあ。やっぱ、やっちゃうかなあ・・・ちょっと可哀想だけど。」

 「それなんだけどさ、私たちにちょっと考えがあるんだけど・・・」
ゆきなが目に剣呑な光を浮かべながら言った。
「そういうのじゃなくて、社会的な信用を完全になくしちゃった方がいいと思うの。そしたら、そんな人が言うことは誰も信じないでしょ?」

 「・・・まあ確かに、仮にレ○プしたとして、梨沙ちゃんが死ぬ気で訴えたら、こっちが致命傷だもんね・・・だけど、この遊園地の動画をばらまいたら、梨沙ちゃん、まさに社会的な信用、なくなるんじゃないの?」
真樹がタバコに手を伸ばしながら言った。

 「うん、この動画でもまず大丈夫だけど、合成だとか、そっくりの他人だとか梨沙ちゃんに主張されたら、そうかな、って思う人もいるかもしれないでしょ?」
みどりが頬杖をついて言った。
「・・・だから、絶対に言い逃れができない状況で、思いっきり恥を掻いてもらえばいいと思うの。今度こそ、ぐうの音も出ないくらいに。」

 ・・・そして、ゆきなとみどりは代わる代わる、二人で考えた案を話しはじめた。それを聞いた大人達は、あまりにも容赦の無いその案に最初絶句し、次に目を輝かせて具体的な実現方法の検討を始めた。

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 「生徒会長さん、ちょっと話があるんだけど・・・」
恥辱の遊園地から3日後の昼休み、梨沙は男子に後ろから肩を叩かれた。

 「え、なに、岩本くん・・・」
梨沙は身体をびくっと小さく震わせ、その声に内心の嫌悪をできるだけ抑えながら振り返った。岩本は、あの日梨沙を遊園地に連れて行った張本人なのだ。あれから何も言ってきていなかったが、あの日何があったか、きっと知っているのだろうと思うと、まともに顔を見ることができなかった。

 「・・・谷村さん、最近そっけないよね? 何か怒ってる、俺のこと?」
梨沙の気持ちに気付かないかのように岩本がおどけて言った。
「そう言えばさ、この前の撮影会、どうだった? 野々村さんからさっき連絡があって、すごくいい写真が撮れたってお礼を言われたんだけど。」

 梨沙の表情がさっと強ばった。
「・・・う、うん・・・まあ、普通に写真撮ってもらっただけ、だけど・・・」
岩本の無邪気な笑顔を見ながら、梨沙は戸惑って言葉に詰まった。岩本君、ひょっとして何も知らないのかな・・・ただ、私を連れていく役をしていただけなの?・・・

「そっか、それなら良かったね。」
岩本はにっこり笑うと、ポケットから携帯端末を取り出しながら言った。
「野々村さんは、梨沙ちゃんも撮影会を楽しんでたって言ってたけど、そうなの?」

 「・・・え・・・う、うん、まあね・・・」
梨沙の脳裏に遊園地での痴態がフラッシュバックのように浮かび、身体がかあっと熱くなった。女の子として、絶対に見られたくない姿を大勢の男の前で晒してしまったのだ。楽しい訳なんてないのに・・・
「もう、いいかな・・・ちょっと、文化祭の最終確認の打合せに行かなくちゃいけないから・・・」
 
 「ああ、ごめんごめん。明日からの文化祭の準備、大変だね。生徒会長さん、休み時間も忙しいもんね・・・」
そう言いながらも、岩本は立ち去る気配を見せなかった。ちらっと周囲を見て、近くに誰もいないのを確認してから、携帯端末を操作した。
「それじゃあ、こんな写真も、楽しく撮ってもらったんだよね?」
岩本は携帯端末の画面を梨沙に見せた。

 その瞬間、美少女生徒会長の表情がさっと固まった。
「きゃ、きゃあっ・・・やめて、早く閉じて・・・」
梨沙の顔が引きつり、小さな声で必死に懇願した。

 携帯端末には、梨沙が全裸M字開脚姿で遊園地の機関車の上に乗せられ、無毛の股間を晒しながらオナニーをさせられ、絶頂の瞬間に潮を噴いている写真が映し出されていた。

 「どうして? これ、すっごくいい写真じゃん。つるつるのオマ○コも、イく時の梨沙ちゃんの顔もばっちり可愛く撮れてるし。さすが、野々村さんだよなあ。」
岩本はわざとのんびりした口調で言いながら、梨沙の反応を楽しんだ。
「・・・ねえ梨沙ちゃん、今度の文化祭でさ、写真部主催の撮影会に出演してくれないかな? 『文化祭で生徒会長がストリップショー』って宣伝したら、すごく盛り上がると思うんだよね・・・大丈夫、こんな風に、オマ○コパックリ開いて、気持ちよく潮吹きオナニーしてくれるだけでいいからさ(笑)」



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