PART 70(bbbbx)

 「あの・・・こちらです・・・」
梨沙は通路に顔だけ出して、男に声を掛けた。

 「お、そこにいたのか・・・探したぞ、もう大丈夫」
男は梨沙の顔を見ると、猫撫で声で近付いてきた。

 「ありがとうございます・・・すみません、服を・・・」
すぐそこまで近付いてきた男に向かって、梨沙は思い切り手を伸ばした。下半身裸なので、できるだけ近くに来ないでほしかった。

 「ああそうか、下が裸だから恥ずかしいんだよね、ごめんごめん。」
男はそう言うと、少し手前で立ち止まって、スカートを持った右手を梨沙に向けて差し出した。
「ほら、これで届くかな?」

 「は、はい、ありがとうございます・・・」
あともう少し・・・梨沙はぐっと手を伸ばした。

 梨沙がスカートを掴もうとした瞬間、男はその手を少し引いた。

 「あ、えっ!」
梨沙はぎりぎりのところで逃げていくスカートを掴もうとさらに手を伸ばし、バランスを崩した。すると、その手を男の手がぐっと掴んだ。
「え、何?」
 
 「はい、捕まえた!」
男は梨沙の手を掴んだまま、一気に足を進めた。そして、梨沙が隠れていた国文学の本棚の間に入ってきた。

 「きゃ、きゃあ!」
梨沙は小さな声で悲鳴を上げ、残った左手首で股間を庇った。
「いや、放してくださいっ」

 「何だ、お前? ずいぶん迫真の演技じゃないか?」
男は呆れたような顔をした。
「どうした、練習か? まあ、やる気になってくれたんならいいんだが。」
男はそう言いながら、梨沙の手を放そうとはしなかった。もう一方の手で携帯端末を操作し、口に当てた。
「俺だ、やっと見つけたぞ。国文学の本棚だ。ここでやるぞ。」

 ほどなく、数人の男がばらばらにやってきた。6人の男達に囲まれ、梨沙はひぃっと悲鳴をあげた。

 「お、急にいい表情になったねえ、すずちゃん!」
一人の男がビデオカメラを肩に担ぎながら言った。
「うん、いかにも襲われてる女子高生って雰囲気、よく出てるよ」

 (・・・!)
すずちゃん、という言葉を聞いて、梨沙の脳裏に一つの事態が想像された。いや、まさかそんな偶然、あるわけない・・・

 梨沙の嫌な予感が現実であることを裏付けるかのように、6人の男達が慣れた様子でそれぞれの持ち場についた。カメラマン、照明、アシスタント、プロデューサー・・・などと理解するとその配置が説明できてしまうような気がした。

 「よし、それじゃあパッパと行くぞ! シーン51、はいっ!」
プロデューサーが声を掛けた。

 「・・・え、えっ?」
カメラにぐっと狙われ、梨沙はしゃがみ込んだまま、下半身の前と後ろを庇う手に力を込めた。やっぱり、これ、撮影なの? まさか、大石すず主演のAV・・・ち、ちがうっ! 私、大石すずじゃない!

 「もう、仕方ねえなあ・・・それじゃあ、シーン55に変更、はい!」
プロデューサーが呆れた口調で言って、ぽんと手を叩いた。

 次の瞬間、梨沙は自分の身体がふっと浮くのを感じた。後ろから近寄られ、脚の間に手を入れられ、一気に持ち上げられたのだ。
「きゃ、きゃあ・・・」
ここが図書館であることを辛うじて覚えていた梨沙は、小さな声で、しかし切実な悲鳴をあげた。
「助けて、柏原くんっ!」

 しかし、梨沙の悲鳴は無視され、背後から梨沙を持ち上げた男は、その両脚をぐいっと左右に広げた。空中で、幼女がおしっこをする格好にされ、淡い恥毛の覆われただけの秘部を露わにされた梨沙は、いやいやをするように首を激しく左右に振った。しかし、目の前ではカメラが正面から股間を狙い、照明担当が、周囲にばれない程度に抑えた光を全身に当てていた。

 (う、うそ、こんなの、嘘よ・・・)
梨沙は、突然起きた事態に頭がついていかなかった。ついさっきまでは、柏原くんに抱きしめられて、ファーストキスをして、幸せな気持ちで一杯だったのに・・・今は、裸の下半身を大股開きにされて6人の男達に見られ、しかも、プロ用機材で撮影されている・・・
「い、いや、ちがうんですっ、お願い、放して!」
梨沙は身体をくねらせ、膝から先の足をばたばたさせ、必死に逃れようとした。

 しかしそれは、撮影スタッフ達にとって、想定どおりのすずの演技だった。いいね、急にすずちゃん、ノリノリになったじゃねえか、怯えた表情とか、本当にうまいな・・・

 梨沙をM字開脚で抱え上げている男は、そのまま移動を開始した。目の前のアシスタントが、周囲の様子を確認しながら、次のコースを指示するので、一般客に見つかる心配はなかった。

 「ひ、ひぃぃ・・・」
ぱっくりと裸の下半身を開かれ、女性として最も隠したい部分を晒しながら、図書館を移動する・・・それは、16歳のウブな女子高生にとって、あまりに恥ずかしすぎる経験だった。特に、男が通路を歩く時には、遠くにいる何人もの一般客の姿が視界に入り、梨沙は心臓が止まりそうな気がした。

 性器丸出しの少女を抱えながら、7人の一行は、南米文学のコーナーに来た。梨沙はそこでやっと床に下ろされ、その瞬間に秘部と尻を隠した。

 (あ、ここなら、柏原くん、助けに来てくれる・・・お願い、早く!)
梨沙は、こんな姿を柏原に見られるのは恥ずかしかったが、とにかく早く助けに来てくれることを祈った。

 「はい、それじゃあ、次は、・・・シーン51! 今度こそ頼むよ、すずちゃん・・・」
プロデューサーはそう言って手を叩こうとして、ふとその手を止めた。
「・・・なあ、すずちゃん・・・ちゃんと台本、読んできた?」

 「・・・」
梨沙は答えようがなかった。そもそも自分はすずではないのだから、台本なんて読んでいるわけがない。しかし・・・今さら自分が大石すずではないと説明したら、一体どうなるのか・・・間違いを謝って、すぐに解放してくれるのか・・・それとも、すずちゃんに逃げられたから、今日は私で撮影することにするかも・・・その場合、断ったら今のビデオを公開すると脅されて・・・そしたら結局、谷村梨沙として、AVを作られてしまうかもしれない・・・

 「・・・す、すみません、読んできませんでした。ごめんなさい・・・」
とっさの判断で、梨沙はとりあえず、すずになりきることにした。強引に逃げるよりも、ひとまず皆を安心させて、隙を見て逃げ出し、図書館の人に助けを求める・・・下半身裸なのはものすごく恥ずかしいけど、AVを撮影されてしまうよりはまし・・・
「でも、一生懸命やりますので、許してください・・・」

 「・・・たく、仕方ねえなあ・・・」
プロデューサーはそう言いながらも、だいぶ機嫌が直っていた。
「じゃあ、教えてあげるから、頑張ってくれよ。・・・シーン51は、四つん這いで中を逃げ回るシーンだから、そこで四つん這いになって、本棚の、この一列を、端から端まで、歩くんだ。もちろん、ケツは色っぽく振って、恥ずかしい顔も頼むよ。」

 「そ、そんな・・・は、はい・・・」
そんな格好をしたら、お尻の穴まで見えてしまう・・・梨沙はそう思ったが、ここで疑惑を持たれたら、逃げるチャンスがなくなってしまうと思うと、慌てて頷いた。

 「それじゃあ、シーン51、スタート!」
ぽんと小さくプロデューサーの手が叩かれた。

 (う、うそ・・・こんなの・・・は、恥ずかしいっ・・・)
見知らぬ男達に囲まれ、撮影されているのに・・・梨沙は仕方なく、膝立ちになって上半身を前に倒し、両手を床について、四つん這いの格好になった。2台のカメラが、自分の姿を前後から撮影していた。

 『足を大きく広げて、肘を曲げて背中を反らせて!』
カメラの後ろのアシスタントがカンペを示した。

 い、いや、こんなの・・・梨沙は指示どおり、大股開きで、尻を思い切り上に突き出す四つん這いポーズを取った。お尻がぱっくりと左右に割れてしまっているのが、見なくても分かった。そして、真後ろからのカメラが、一番見られたくない部分を撮影しているに違いない・・・梨沙はあまりの恥ずかしさに、足ががくがく震え、顔は真っ赤に上気していた。

 『いいよ、その表情! そのまま、首を後ろに曲げて、カメラに目線!』

 ・・・尻も秘部も丸見えの大股開き四つん這い姿で顔を後ろに向け、死ぬほど恥ずかしい姿を顔入りで撮影されてしまった梨沙は、内心でがっくりしていた。早く、助けに来て、柏原くん・・・

 しかし、助けが現れる気配はなく、撮影は順調に続いてしまった。梨沙は、下半身丸出し四つん這い姿で、本棚の間や通路を歩かされ、いやらしく腰を振らされた。


 「・・・よし、これでシーン51もいいな。」
プロデューサーは満足そうに呟いた。
「それじゃあ次、シーン57。全裸オナニーだ、すずちゃん」

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