PART 82

 数分後、ようやく意識を取り戻した有希は、頬からの冷たく固い感触に、自分が机の上で失神したことを思い出した。
(あ・・・あれ?)
両足が大股開きで机に結びつけられていない。後ろ手縛りも解かれている・・・股縄だけの下半身はそのまま・・・有希は自分がテーブルの上にうつ伏せにされていることを悟った。5人の男達もいなくなっていてくれないか・・・有希は顔を小さく上げ、周囲を見回した。

 「やあ、有希ちゃん、やっとお目覚めかい?」
黒木が笑顔を浮かべて有希の顔を覗き込んだ。うつ伏せになっているために上向きになっている、ぷりっと下向き卵のようなお尻をぺんと叩いた。ひっと悲鳴をあげる有希が愛らしかった。
「そんなに驚いた顔しなくてもいいだろ? さあ、撮影の続きを頼むよ。」
そう言いながらも、黒木の手は有希の尻を嫌らしくさすり続けていた。

 「や、やめてください! 触らないでください!」
有希は身体を捻って黒木の手から逃れ、上半身を跳ね上げた。机の上に横座りになり、腰の前後を手で隠した。
「も、もう、許してください。」

 有希に睨まれた黒木だったが、もはやすっかり余裕の表情だった。
「あれ、有希ちゃん、まだ勘違いしているの? 君、今度の週刊Xの巻頭特集に出るってことでいいんだよね?」
今さら下半身を手で覆って頬を染めている有希の美貌を、黒木は下から覗き込んだ。
「まあ確かに沢山ネタは撮らせてもらったけど、こんな記事でいいのかな。『スクープ! 当社の新入社員、二階堂有希ちゃんはパイパン股縄縛りで会議室で絶頂するド変態だった!』って。・・・うん、今回のSupershotの生ぬるいパンチラ緊縛なんかよりも遙かに売れるな。なんたって、モロだもんな(笑)」
あはは、そりゃいいですね、と他の社員達が笑った。

 「・・・そ、そんな! そんなの、あんまりひど過ぎます・・・」
有希はわなわなと震えながら言った。まさかそんなことはしないだろうとは思う一方、今までの週刊Xの下劣な記事を思うと、あり得ないとは言えなかった。そしてそんな卑劣な男達の前で、自分は淫らで浅ましい痴態をさんざん晒し、撮影されてしまったのだ・・・
「お願いです、それだけは、記事にするのは、許してください・・・」
有希は屈辱にまみれながらも、ニヤニヤ笑っている男達に頭を下げ、そう懇願するしかなかった。

 そうだなあ・・・と黒木はたっぷり焦らしながら、やっと小さく頷いた。
「分かったよ。そんなに潤んだ瞳で見つめられたら断れないもんな。」
ほっとしたように頬が緩んだ有希の顔を楽しそうに眺め、黒木は言葉を続けた。
「でも、巻頭特集はやっぱり君で行くからな・・・まあ、匿名ってことにしてやるから、それならいいだろ?」


 ・・・その1分後。そんなことはできないと抵抗し、許してと懇願した有希だったが、結局許しを得ることはできず、屈辱のショーを再開しなければならなかった。しかも今度は、縄で縛られて無理やりではなく、自分から演じるように命令された。

 会議室のテーブルに立った有希は、5人の男たちに見つめられながら、引きつった笑いを浮かべた。今は上下とも、ベージュのスーツをかっちりと着ていた。スカートを履くことをようやく許されたのだ。
「・・・S書房の、新入社員の、に、二階堂、有希です・・・アイリスさんで、縄の味を教えられて、はまっちゃいました!」
有希は皆を見つめながらそう言うと、手を下におろしてスカートを掴み、ゆっくりと捲り始めた。ストッキングを穿いていない生足が太ももまで露わになっていった。そして有希の手は止まらずにそのまま上がり続け、ついに股間部分が露出した。スカートの下の下半身は、股縄一本だけであり、縄一本が食い込んだ無毛の秘部も丸出しになった。
「・・・み、見て、ください・・・これが、有希の股縄縛り、です・・・あそこの毛は邪魔なので、剃っちゃいました・・・」

 その後、有希は今度は背を向けてスカートを後ろから捲り、可愛いお尻をカメラと男たちの前に晒した。さらに笑顔のまま、スカートのホックを外して一気に机の上に落とした。有希は再び、股縄だけの下半身を晒すことになった。つまり有希に一旦スカートを穿かせたのは、ストリップシーンを演じさせるためだった・・・週刊誌に写真は載せないが、記事にこういうことをしたことは書くのだから、実際に体験してもらわないとならない、というのが黒木たちの理屈だった。
 それが出任せの理屈で、ただ有希のストリップを楽しみたいだけだと薄々分かってはいたが、今の有希に抵抗はできなかった。にやけた目で見つめる男たちの顔を見ながら、有希は悔しさに唇を噛んだ。

 しかしもちろん、ストリップはそれで終わりではなかった。今度はスーツのジャケットを脱ぎ、ブラウスを脱いで、上半身ブラジャーだけの姿になれ・・・それが黒木たちの指示だった。有希は屈辱に震え続けながら、言われたとおりの姿になるしかなかった。そしてその時、有希の身体が震えるのは、屈辱によるものだけではなくなっていた。あ、また、どうして・・・

 おっと、ようやく効いてきたな・・・有希が失神した時に再び催淫剤を塗り込んでいた男たちは、有希の小さな変化を見逃さず、小さく笑みを交わした。
「よし、それじゃあ今度は、そのまま机の上で四つん這いになってもらおうか。今度は逆に、俺達の方に顔を向けるんだ。」

 なぜ顔を向けさせるのか・・・有希は腑に落ちなかったが、裸の下半身を男たちの眼前に突き付けるよりはましと思い、命令どおりのポーズをとった。すると、目の前には椅子にゆったりと座った男たちの顔が見え、有希は別の羞恥を感じて頬を染めた。
「こ、これで、いいですか?・・・」

 「まあ、そんな感じだな。・・・だけど、もう少し脚を大きく開いて、背中を反らせて、ケツを天井に向けるつもりで突き出すんだ。」
黒木は腕組みをしながら満足そうに頷いた。
「そうそう、エロいポーズだな、有希ちゃん。結構オッパイもあるじゃん。・・・おい、部屋の電気を点けてくれ。ばっちり照明当てて、綺麗に撮ってやれよ。・・・お、いいぞ、有希ちゃん、自分からケツ振るなんて、そんなに嬉しいのか?」

 「ち、違いますっ・・・こ、これは・・・」
取らされたポーズの恥ずかしさと、尻を思い切り突き出したことで催淫剤を含んだロープが秘裂に食い込んだことで、有希はまた官能の波に襲われていた。催淫剤のことは知らない有希は、自分が見られているだけで感じてしまっていることに戸惑い、言葉を詰まらせた。一旦動き出してしまった腰は、縄にこすれる快感を味わうと、さらに刺激を求めるようにグラインドを大きくしていった。
「あ、あっ・・・ち、違うんです・・・あんっ・・・い、いや、・・・ど、どうして!?・・・」
あはは、本当に変態だね、有希ちゃん、と笑う男たちの声、連続して浴びせられるフラッシュの中、有希の切なそうな喘ぎ声は徐々に大きくなり、大きな瞳がうっとりとしたように潤んでいった。・・・そして、背後のブラインドが動き始めたことには、もちろん気付く余裕がなかった。

 すっかり有希が官能の波に呑まれたことを見極め、黒木が声をかけた。
「いいぞ、有希ちゃん、これだけエロければ、顔を出さなくても巻頭特集に使えそうだぞ。・・・いいか、許可があるまでそのポーズを崩すんじゃないぞ。うんとエロく、ケツを振り続けるんだ・・・」
黒木はそう言うと、携帯端末を手に取り、何やら操作を始め、耳に当てた。
「・・・おう、鳥飼か。今、ビルの中にいるか?・・・それじゃあちょっと、窓の外を見てみろよ・・・」

 (・・・え?)
鳥飼、という単語を聞いて、一瞬有希が固まった。
「・・・きゃ、きゃあっ!」
背後の男にぐいっと縄を引っ張られ、有希は秘裂に食い込んだ縄に悲鳴をあげた。ほら、ケツが止まってるぞ、と男性社員の声が聞こえ、さらに縄がぐいぐいと引っ張られた。
「あ、あうぅっ!・・・あ、あひぃぃ・・・や、やめて・・・」
仕方なく有希はまた腰を振り始めた。

 『・・・なんですか、黒木さん。また、モデルにエロいことでもさせてるんですか? しょうがないなあ(笑)・・・』
黒木が机に置いた携帯端末から鳥飼の声が聞こえてきて、有希の表情が固まった。
『・・・うわ、すごいですね!・・・ケツ丸出し・・・いや、股縄だけのケツ丸出しで、窓に向けて突き出すなんて、最低ですね、今度のモデル! エロいケツなのは認めるけど(笑)』

 (・・・!? ま、まさか・・・)
有希の身体がビクッと震えてから動きを止めた。そして黒木の意図をようやく悟った。尻を窓側に向けさせて四つん這いにさせた後、こっそりブラインドを上げて、鳥飼を呼び出し、ビルの向こうから観察させている・・・会議室の電気を点けたのは、日陰で見づらいこちらの部屋の中をよく見えるようにするため・・・
(く、黒木さん、ひどい・・・)
有希は顔を上げ、正面にいる黒木の顔を思わず睨んだ。しかし、スピーカーモードになっている携帯端末が目の前に置かれているため、声を出すことはできなかった。また、状況を確認するために、後ろを向いて窓の方を見ることもできない・・・

 「なあ、いいだろ、今度の女?」
黒木は有希の顔をニヤリと一瞥してから立ち上がり、窓の方に歩いていった。
「来週号の巻頭特集の撮影してるって訳。『今、OLの間で緊縛ブーム! 変態女が増殖中!』ってな。有希ちゃんの緊縛動画がきっかけで、こんな変態女が増えてるって記事、面白くねえか?」
黒木は窓際に立つと、向かいのビルの鳥飼と目を合わせて笑った。
「ほら、このエロケツ、有希ちゃんのに似てると思わないか? ほら、鳥飼さんに向けてケツを振って見せろ!」
黒木はそう言うと、腰縄を掴んでクイッと引っ張った。

 「・・・く、くうぅぅ・・・」
脳天を突き抜けるような快感が走り、有希は背中を反らせ、顔を歪めて悶えた。しかし、目の前に携帯端末が置いてあるので、声を出すことはできない。はっきり話したら、ビルの向こうの鳥飼に、尻を剥き出しにしているのが自分だと分かってしまうのだ。それだけは絶対に嫌っ・・・
(こ、こんなの、いやあ・・・)
抗うすべのない有希は、向かいのビルの鳥飼に向けて、再び尻を振り始めた。
「ん、・・・んん、んぅぅ・・・」
声を出してはいけないと思っても、3つの瘤に秘裂と肛門、クリトリスをこすられる快感はますます激しくなり、有希は呻き声を漏らしてしまった。ああ、一体どうしたらいいの・・・

 はぁ、はぁ、はぁ・・・会議室には熱い吐息と喘ぎ声が響いていた。有希は唇を必死に噛み締めながらも、腰の振り方が大きくなるのを止めることができない。み、見られている、鳥飼さんに・・・ああ、もう、駄目・・・本当は私、こんなにエッチな変態だったんです・・・

 『・・・あの、黒木さん・・・まさか、その子って・・・有希ちゃんじゃないですよね?』
スピーカーモードになっている黒木の端末から、躊躇いがちな鳥飼の声が聞こえた。
『今日はSupershotで取材をしているはずですが、まさか・・・』

 「何でそう思うんだ、鳥飼?」
黒木は平静を装って言った。
「ま、確かにこのエロケツは有希ちゃんそっくりだけどな。」
黒木は向かいのビルの鳥飼を見ながら、有希の尻をパシーンと叩いた。背中がぴんと仰け反り、く、くぅ、と抑えきれない声が漏れるのが愉快だった。

 『おい、あれってすっげえな』
『ああ、週刊Xの今度の巻頭らしいぞ』
『よくやるなあ、あの女・・・パイパンじゃねえか(笑)』
今度は携帯から複数の男の声が聞こえてきた。いずれも第一編集担当の男たちの声だった。その全てに聞き覚えのある有希は、思わず息を呑み、尻の動きを止めた。

 「それじゃあちょっと、ケツの穴でも見せて差し上げるんだ、文芸担当の皆さんに」
黒木はにやりと笑うと、股縄をクイッと引っ張った。
「おい、この格好のままで、縄を解くんだ」


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