PART 54(bbbb)

 梨沙の視界には、自分の開いた足の真ん中に、カメラを構えて見下ろす岩本の姿が映っていた。

 「いや、俺は命令されてやってるだけだからさ・・・そういうことはその黒川って人に言ってくれよ。」
岩本はそう言いながら、カメラの角度を調整していた。
「それよりも梨沙ちゃん、お尻の穴が見えそうだから気を付けた方がいいよ。って言うか、お尻の穴の周りの皺が見えてるよ。(笑)」

 いやっと悲鳴をあげて手を動かそうとした梨沙に対し、岩本は淡々と付け加えた。
「それ以上手を伸ばすと、手の甲で隠してるアソコの毛が見えちゃいそうだよ。」

 「大丈夫だよ、梨沙ちゃん、皺なんて、ほとんど見えてないから!」
梨沙を励ます声が生徒の間から聞こえたが、それはある意味、逆効果だった。少しだけど、お尻の穴の周りの皺が見えている、と言われた梨沙は、かあっと全身を熱くしながら、ぎりぎりのまんぐり返しの姿勢を続けるしかなくなってしまった。お願い、見ないで、こんな姿・・・ 
 必死の祈りも空しく、生徒達が見つめる大スクリーンには、梨沙が想像するよりも遙かに恥ずかしい姿が映し出されていた。今度はスクリーンは左側は1画面、右側は上下に分かれた2画面、の構成になっていた。左側には、今の梨沙のまんぐり返し姿を真上から映した中継映像、右側の上には、赤外線透視したM字開脚時の開かれた秘裂のアップで各部分のピンク字での解説入りの静止画像、右側の下には、同じく透視した尻の穴が開かれ、周りの皺に沿って8本のピンクの線が入っている画像、が表示されていた。

 男子生徒達の多くは、周囲の女子の目を気にしながらも、ちらちらとその大スクリーンを見てしまっていた。全てにモザイクが入っていないのだから、彼らが今まで見た中で、最も卑猥な女性の姿がそこに映っていた。しかもそれは、男子ならほとんどの者が憧れ、想像の中で裸にしたことのある美少女なのだ・・・きれいな太腿に挟まれ、真っ赤になっている梨沙の表情もまた、たまらない見世物になっていた。

 黒川が沈黙してから、もう10分以上が経過していた。まんぐり返しになってからも5分以上が経ち、梨沙の太腿や手がぷるぷると震え始めていた。それは身体を思い切り折り曲げ、手をぐっと伸ばすという不自然なポーズであり、梨沙の体力にも限界が近づいていた。

 「あ、あぶないよ、梨沙ちゃん。手をずらしたら、お尻の穴どころか、アソコまで丸見えで中継されちゃうよ?」
岩本が親切なアドバイスの振りをして梨沙をからかった。あと1分ももたないかもね、梨沙ちゃん・・・ついに、フルカラー、超高精細で公開だね(笑)
 そして岩本の内心の声は、男子たちの内心とほぼ同じだった。見られるのなら、やっぱり緑がかった透視よりも、生で見てみたい・・・アソコの中、きれいなピンクなのかな・・・乳首と乳輪も透けたのは見たことあるけど、モロはまだだから楽しみだな・・・

 
 しかし、美少女生徒会長の自己犠牲の恥ずかしいショーは、意外な形で終わりを告げることになった。

 『おっと、梨沙、命令してもないのに、すごい格好しているな!』
どこか上機嫌な黒川の声が久しぶりに響いた。
『もう、制限時間が終わったぞ。まあ、よくイかせてくださいって言わずに我慢したな。もう、いいぞ。』

 「・・・え?」
梨沙はあまりに意外な言葉に少し戸惑った。しかし次の瞬間、はっとしたように岩本を見つめ、強い口調で言った。
「岩本くん、もう終わったのよ。演台の中に制服があるから、持ってきて、早く!」

 やはり戸惑いながら制服を取ってきた岩本に、梨沙はブラウスを胸の上に、スカートを腰の上から掛けるように言った。そして、制服で身体を隠しながらまんぐり返しの姿勢を崩し、座りながら後ずさり、演台の後ろに移動した。下着は見あたらなかったため、スカートとブラウスだけを身に着けた。そして、そっと2つのローターを前後の穴から抜き取った。やっと終わった・・・梨沙は、少し落ち着き、立ち上がった。

 その間に、大スクリーンは消えていたが、黒川の声だけが響いた。
『ほう、制服姿のお前も可愛いな。まあ、素っ裸を必死に隠している方がお似合いだけどな。(笑)』

 「ねえ、本当にこれで終わりなのよね? 私の勝ちなんだから、あの・・・」
黒川のからかいには取り合わず、梨沙はとにかく確認しようとした。

 『分かってる。お前のも、K附の他の女子の動画も静止画も、絶対に流出させないし、売りもしないって約束してやるよ。・・・それから、今ネットに流出して大騒ぎになってる画像も、全部消してやるよ。』
黒川の声は、やはりどこか上機嫌な雰囲気だった。

 「本当に? でも、どうして急に・・・」
梨沙はどこか釈然とせず、聞かずにはいられなかった。これは何かの罠ではないのか・・・
「それに、ネットに流出した画像を消去なんて、できるわけないじゃない・・・適当なこと、言わないでよ。」
掲載される度に消されているとは聞いていたが、それはいたちごっこに過ぎない。きっと、裸でバイクに乗っている姿、沢山の人にダウンロードされてしまっているのに・・・

 『お前も疑り深いな・・・だから、お前は勝負に勝ったってことだよ。バスケではさんざん失敗したけど、その延長時間の分も全部、イかずにクリアしたからな。』
黒川は梨沙の物言いにも怒らずに言った。
『まあ、信じる信じないはお前の勝手だが・・・そうだな、今夜、証明してやるよ。』
黒川はそう言うと、口を挟もうとする梨沙を気にせずに続けた。
『それにしても、お前、あんまり感じないんだな。ローター責めであそこまで耐える奴、他にはいないぞ。・・・それから、生徒の皆は、立派な生徒会長さんに感謝するんだな。絶対に、今日のことは口外するなよ。アイリスを敵に回したくなかったらな。』
その言葉を最後に、ぷっつりと接続が切れる音が響いた。

 
 意外な結末に、しばらく体育館の中はしんと静まり返った。ステージの上で全校生徒の視線を一身に浴びている梨沙は、ほっと安堵して、両手を演台について身体を支え、熱い息を吐いていた。緊張・羞恥・快感・・・それらが一気に解け、膝から力が抜けそうだった。

 パチ、パチ、パチ・・・体育館のあちこちから拍手が起き始め、それは一気に全生徒に広がった。パチパチパチパチ・・・梨沙ちゃん、頑張ったね、ありがとう、すごいよ生徒会長っ、梨沙ちゃん最高っ・・・歓声と掛け声も止むことがなく、体育館の中はしばらく熱気と興奮に包まれた。

 これは、本当に勝利なのか・・・みんなの前でさんざん晒してしまった痴態を考えながら、梨沙は複雑な気持ちだった。しかし、皆の好意に満ちた表情を見て、暖かい掛け声と歓声を聞いているうちに、さっき起きていたことがどこか遠くの世界のことのような気がしていた。黒川の言うとおり、私、そんなに感じていなかったのかな・・・みんなには、私が感じてるって、あんまり分からなかったのかもしれないな・・・

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 緊急生徒総会が終わった後、梨沙は友達のお茶の誘いを断り、まっすぐに家に帰った。感じたことを知られていなかったとしても、乳房や秘部は隠していたとしても、全校生徒の前で裸になってしまったことは、とても16歳の女の子にすんなり受け入れられることではなかった。女子達の同情の視線や、男子達の好奇を隠しきれずに自分の制服姿を見るのがたまらず、いたたまれない気持ちだった。

 梨沙の携帯端末はずっと電源を切られたままだった。梨沙は家に帰るとすぐにベッドに入った。すると、暖かい布団の感触に緊張が一気に解け、梨沙はすぐに深い眠りに落ちてしまった。

 梨沙がようやく起きたのは、夕食ができたことを知らせるために母親が部屋のドアをノックした時だった。あれはやっぱり、夢ではなかったのかな・・・梨沙はそう思いながら、夕食の味もよく分からなかった。

 その後、風呂に入り、部屋に戻った梨沙は、ふと黒川の言葉を思い出した。ネットに流出した裸の写真を全て消去する・・・今夜、証明してやる・・・

 一体、あれはどういうことなんだろう・・・梨沙はふと気になり、ノートパソコンの電源を入れた。

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 一方、柏原は生徒総会の後、梨沙が足早に体育館を去ると、壇上に素早く上がって演台に立ち、残った生徒達に話しかけた。その内容は、今日透視映像を見たことは、絶対に梨沙に知られないしようということと、梨沙の画像は全て削除しよう、というものだった。

 残っていた生徒全員の賛同を得た副生徒会長は、演台の隅に残されていた2つの卵形の器械に気付くと、素早く手に持ち、ポケットにしまった。どこか、皆に気付かれないように処分しよう・・・

 柏原は次に、その足で教員室に向かった。そして学年主任の富田を見つけると、つかつかと近寄って言った。お前、教員会議に呼ばれたのは明日だろ、と言いかけた富田を制し、とにかく今、校長先生に話をさせて欲しいと訴えた。仁美の口添えもあり、校長との面会を許された柏原は、まずオートバイのことを謝った。それから、同席している教頭と富田も含めた3人の目を見て、今日の緊急生徒総会であったことをできるだけ正直に話した。ただ、透視映像を上映されてしまったことや、梨沙が感じてしまっていたことには触れなかった。

 柏原の話を聞き終わった校長は、明日の教員会議で全教師にこのことを知らせ、生徒達には、改めて明日の朝、各教員から話をさせることを約束した。そして、予定されていた柏原の処分の検討はしばらく延期する、と付け加えた。

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 今日の緊急生徒総会で、梨沙の次に羞恥を味わされた二人の女子は、他の女子とは別れ、二人だけで駅前のカフェに入った。

 パンティー脱衣シーンと放尿シーンを盗撮され、全校生徒に公開されてしまったゆきなとみどりは、黒川の裏切りにひとしきり憤った。そして、ゆきなが黒川に電話したが、ろくに取り合ってもらえなかった。黒川は、、梨沙への責めはもうやめたので、2人も絶対に余計なことをするな、もし何かしたら、お前らの恥ずかしい動画をネットに流すぞ、とだけ口早に言うと、慌ただしげに電話を切ってしまった。

 ゆきなとみどりの2人は、黒川のいきなりの変わりように憤慨した。そして少しお茶を飲んで落ち着くと、梨沙に悪いことをしたと反省するようになった。なんといっても、自分達の死ぬほど恥ずかしい動画の流出を防ぐために、自分が犠牲になって、普通の女の子なら恥ずかしくて耐えられない痴態を晒してくれたのだ・・・全裸を両手だけで隠して、全校生徒の間を練り歩かされて・・・

 ゆきなとみどりは、どちらからともなく、今までの梨沙達の恥ずかしい画像や動画を全て削除することにした。その中には、芳佳の着替えを盗撮した、秘部がはっきりと映っている動画も含まれていた。それは、芳佳の動きを怪しんだ2人が、黒川にも内緒で撮影していたものだった。
 黒川が最も欲しかった、須藤道雄を脅すための決定的な材料は、人知れず抹消されることになった・・・

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